夜を朝を空を虹を走って、ページ数の少なさを感じさせない、のびのびノビシロを拡げる展開で、園児の部から初の最優秀賞に輝きました。読み手の気持ちを上昇させてくれる、これぞ絵本のときめき。おめでとうございます。

いきなり夜の場面が登場し、劇的な展開をさせています。それから朝になり、山を登り、空を走り、虹を渡る新幹線「はやぶさ」が伸びやかに描かれています。全てのページを見開きにしてスケール感を出し、それぞれのシーンに合わせた自在な形の変化と新幹線を境界にして配置した星や雲、小鳥たちと草原の対比が見事に活きています。

園児の部から最優秀賞作品が選ばれたのは、このコンクールの中では初めてだそうです。星空の中を、朝陽の中を、そして山や雲や虹の上をぐんぐん走り続ける新幹線はやぶさ号が、見開きページいっぱいに描かれ、絵に迫力と動きを生んでいます。星がちりばめられた夜空、やわらかな水色の空の表現、簡潔な文にも感心しました。表紙と裏表紙が一枚の絵になっているところもすごい！ 本当におめでとう。

涼真ちゃんの新幹線は、夜にも朝にも、山だって空だって走っちゃう！ 画面いっぱいにのびやかに描かれた新幹線とことばは、読み手の心にも「明日へのワクワクの虹」をかけてくれました。

星の輝く夜を、早朝の射水野を、そして、山へ空へ七色の虹へと夢を乗せて新幹線が走ります。純粋で希望に満ちた心情が素直に表現されています。

中高生の部は、思春期の影と寄り添いながら、自分の内側へと向かう作品が多い中、『地獄ふれあい市』の小山くんは、進級し、ここに来ても、ひょうひょうと独自の路線を走ります。

先ず、面白い表紙の絵やタイトルから惹き付けられます。文章の内容はウイットに富み、発想力の豊かな持ち主です。絵の表現では説明的になり過ぎている点が少々気になります。

昨年まで小学生の部で最優秀賞等を受賞していた小山樹君の力作です。色彩のあでやかさと、その鮮烈な色合いで鬼を始め、地獄の情景が胸に迫ってきます。怖い地獄が、一変して楽しい市になり、小山君独特のブラックユーモアの世界が広がり、その世界についつい引き込まれてしまいます。今後更に新たな世界が開かれることを期待しています。

恐竜の化石の歴史を、迫力ある火山の噴火、逃げまどう恐竜たちの必死さがおおらかなタッチで描かれていて見事。

化石掘りの経験からイメージを膨らませ、恐竜が化石になるまでの長い地球の歴史を10ページにまとめ上げました。

屈託なく動きまわる恐竜の姿が愛らしく、時を経て化石になって目の前に現れてくる様子に恐竜に寄せる限りない愛着がうかがわれ、その愛くるしい一途な気持ちを評価します。

よく考え、工夫し、ていねいに描かれて仕上がっています。ビンにつめた空の色、きれい。

まさに上質のファンタジー。全14場面のどれひとつ無駄がなくていねいで、心地良い風が吹くようなさわやかな読後感。和依香さんの人柄がにじむようなふんわり優しいテイストに魅了されました。

水たまりという身近な所に目を留め、そこから夢を膨らまし、テンポよく話を進めています。話全体の構成もまとまり、各場面での少女の心情が、その淡い色合いとマッチして夢見がちで純粋な少女の気持ちが表されています。

全編が切り絵でできていて、蒼大さんの根気良さと器用さに頭が下がります。お話のカギになるのが「吻」というのも斬新で、着眼点の鋭さを感じました。

3種の生き物の描写にわくわくしました。

タカアシガニとシャチとシロクマが海の中で鬼ごっこをします。登場人物の組み合わせと鬼ごっこの様子が園児ならではの発想で描かれています。見返しにも工夫があり、楽しく絵本を作っている様子が伝わってきました。

中高生の部は、思春期の影と寄り添いながら、自分の内側へと向かう作品が多い中、村上くんも車道(くるまどう)をひたすらに独走中。誰も彼らを止められません。

村上遼さんは、これまでにも車両に関する作品で応募され、その知識と描写力には定評があります。『へんしんへんしん』は、内容に何か新たな要素が加われば魅力が倍増し、盤石な作品になります。

実るりんごの造形のおもしろ味は、幼いひとにだけ与えられた原始のちからにあふれています。

ページの中央にドーンと描かれたりんごの木や、木からツンツンと飛び出すように描かれた大小さまざまなりんごの実が印象的です。

出ました言葉名人！　「わくわくするきょう どきどきするあした」こんな言葉をいつも胸の中に持っていられたら、どんなに素敵でしょう。

なんといっても主人公のきいちゃんが、抜群にかわいい！ 見返しや裏表紙まで読み手が笑顔になるしかけが散りばめられていて、完成度の高い絵本です。凛さんの作品で、富山弁は詩的な調べなんだと教えてもらいました。

地域に残る伝説を未来につなげていく若い種が育っていることに喜びを感じます。

今開発の伝承芸能を地元以外の人にも判りやすく伝える大作です。これを機会に、土曜塾のみんなが絵本作りの楽しさを味わえたことでしょう。

今開発土曜塾18名の合作です。地元・今開発に伝わる獅子舞(くまじし舞い)をつぶさに見て興味関心を持って描いています。18名が気持を一つにして獅子舞を描いている姿がほほえましく、獅子舞を通して地元への愛着が育まれている様子がよくうかがえます。今回も素晴らしい作品に多く出会えて楽しいひと時を過ごさせていただきました。