『おおしま国際手づくり絵本コンクール』は当館の開館を記念して始まり、今年で27回目です。今年は国内外から197点の作品が寄せられ、応募者は10代〜80代と幅広い年齢の方が手づくり絵本に親しんでいらっしゃることがうかがえました。日常のささいな出来事や自分の経験を取り上げたもの、伝えたいことをテーマにしたものなど手づくり感を大事にしている本コンクールらしい心温まる作品が多数集まりました。ご応募いただいた皆様には今後も手づくり絵本に取り組んでいただき、一層このコンクールが活気づくことを願っております。来年もたくさんのご応募をお待ちしています。 審査委員
最優秀賞文部科学大臣賞『あおくん あかくん きいろちゃん』
はたこうしろう 擬人化がうまく、信号の色それぞれの役割にピッタリ合ったキャラクターにしているせいでお話にすっと入っていけます。さらに後半のエピソードもそのキャラクター設定がきいてきます。ハラハラする場面もありリズムもあるプロ顔負けのまとまりのある作品でした。 山本孝 お話がとてもシンプルで、きちんとまとまっている。イラストも可愛らしく、キャラクターも個性的で感情移入しやすい! 商品として書店にあっても、違和感のない出来。きいろちゃんが動かなくなったときは、思わず心配してしまいました。手描き見返しも、作品への愛情が感じられました。 広田郁世 画面の中にきれいな色の固まりが転がって白い背景にとてもかわいらしく、グレーが生きています。けなげな信号機の役割を助け合いの視点からみつめ、サイズも展開もバランスよく手に取りたくなる作品です。 細川律子 一日中働く信号機のお話。一晩中ちかちか働いている黄色が、もし朝起きてこなかったらどうなるだろう。そりゃあ大変! そんな発想から生れた親子で楽しめる明るい色合いの優しい絵本です。 金賞富山県知事賞『ゾウリムシばあさんインドでくらす』
はたこうしろう 奇想天外な展開にびっくりしてしまいます。なのに不思議と置いていかれる事なく話の中に入れるのです。根底に流れるやさしさと、どこか達観した語り口で納得させられてしまいますね。表紙に「その1」とありますが「その2」もぜひ見たいと思わせます。 山本孝 表紙からガッツリと心を掴まれた作品。ゾウリムシ? インド? そんな疑問を感じる間を与えさせない、強引かつ奇想天外な展開! その読者を置きざりにしていく潔さは快感の一言! 読み終わってまたすぐ読みたくなる! 中毒性の強い作品! その2もぜひ! 広田郁世 変というか妙というか不思議な魅力に溢れています。ミクロな世界とワールドワイドな世界が混在して、私にも落ち着いて考えられる場所を〜と思ってしまいました。次はどこで暮らすの? どんなシュールな出会いが? と次が見たくなり、作った方に興味が湧きました。 細川律子 溜水に棲む小さなゾウリムシやミジンコが南国インドでのんびり暮らすという不思議な話ですが、違和感なく引き込まれてしまうインドの色彩豊かな絵本です。 金賞射水市長賞『ひっぱってみて』
はたこうしろう しかけとしたらとっても単純なのに逆にそれを最高に生かした楽しい作品です。そしてアイデアもさることながら造形のセンスが光っています。大人も子どもも引っ張るたびに歓声が上がる事でしょう。ジンベイザメが気に入りました! 山本孝 シンプルな表紙にまんまと騙されました。ページを捲っていきなりの富士! もうあちらの思うツボ…。ジンベイザメに感動! 東京タワーに勇気を貰い! お姉ちゃんのタオルにドキドキし! 太陽系の壮大さに息を飲み! 特大ウンコでサヨウナラ〜♪見事に心も引っ張られてしまいました(笑) 広田郁世 楽しい力作です。東京タワーが飛び出したかと思ったら、宇宙までも。たくさんの刺繍、追加もどんどん出来そう。お姉ちゃんにはドキドキしました。ジンベイザメは手を入れてパクパクできると楽しいな。 細川律子 引っ張ると富士山やくじらが飛び出す布絵本の大作。子ども達なら床に置いて引っ張り、背くらべをして楽しむでしょう。 銀賞富山県教育委員会賞『うつくしいきもの』
はたこうしろう 絵に魅せられました。全編にわたり全く手を抜く事なくプロ並みに隅々まで美しく描き上げました。自分の中の「伝えたいというもの」をテーマにすれば、この情熱と高い美意識は、たくさんの人々の心に残るものが作れるはずです。 山本孝 絵が美しく、各場面の絵の表現力は見とれてしまうほど。特にヘビのシーンの迫力は素晴らしい! それだけにストーリーの長さ、設定の難しさが気になりました。読んでいる最中、ページを戻って話を確認し直すことも。もう少しお話のシンプルな作品も見てみたいです。表紙(裏表)見返しにも少し拘って貰えると、世界観が上がるのではと思います。 広田郁世 色も構図もとても素敵。それぞれの場面の絵そのものが、たくさん語っていると感じました。 細川律子 主人公シクンの成人式の着物についている血痕を取るために西の島へと旅に出る壮大な物語。落ちついた精密な絵が物語を一層深めています。 銀賞射水市絵本文化振興財団賞『ぼくがネアンデルタールじんだったころ』
はたこうしろう 子ども達がネアンデルタール人になって古代に行くというアイデアがいいですね。ワクワクしてお話に入れます。そして次々に飛び出す動物は迫力がありました。全体に正確で綺麗なしあがりも感心させられました。 山本孝 思わず表紙をめくりたくなるタイトル! 飛び出す動物も迫力があって楽しい! たっぷり冒険して、最後にパンパンで戻ってくるのも、流れが自然で気持ちいい! 大冒険なので入り口と出口(特に)を少し明確にしてもらえると、読者にはより分かり易いかも。 広田郁世 罠に落ちたナウマン象の様子に感心しました。幼稚園の場面から空想の世界の場面に、いつの間にか突入。先生の手拍子に私もハッとしました。 細川律子 子ども達の空想の世界が縦横に広がっていくわくわくしたしかけ絵本です。 銅賞射水市教育委員会賞『ばあちゃんの おっぱい七変化』
はたこうしろう 老化を否定的にではなく、愉快で役立つものに変化させる発想がすばらしいです。ユーモアも斬新で構成力もしっかりしていました。絵の技術を高めればぐっと良くなると思います。 山本孝 かつてこんなおっぱい絵本があっただろうか!? おっぱいの使い分け? 上巻き? 下巻き? さらにおっぱい使いはエスカレートしていく! 大胆に…好き放題に…こりゃあ男には描けません(笑)驚きと笑いに満ちたトンデモナイおっぱい絵本でした! 表紙上部のおっぱい(?)もっと思いきって欲しい(笑) 広田郁世 そうそう! と、ひいおばあちゃんを思い出しました。ありそうでなかった気がします。渦巻きパンを見たら笑ってしまいそう。 細川律子 8人の子どもを育てたおばあちゃんの長いおっぱいの役割を描いた作品。大笑いした後、自分もおっぱいに育てられたことに気づきしんみりとなりますね。 銅賞射水市教育委員会賞『8月15日の誓い』
はたこうしろう 広島の原爆がテーマです。ふつうおどろおどろしくなりそうですが、美しい造形で表現されています。そうすることで人類の希望を強く感じることができる素敵な作品となりました。もっと大きなサイズだったらさらに力のある作品となったでしょう。 山本孝 戦争をテーマにしているにも関わらずとても美しい印象を与えてくれる絵本。文章に寄り添った絵が戦争の恐ろしさ、平和、命の大切さ伝えてくれます。ただページが少ないように感じます。もう少しページを増やしても良いかも。今のままでも良いのですが、そうした方がより絵本の個性が上がる気がします。表紙(裏表)見返しにももう少し時間をかけて欲しいです。 広田郁世 光沢フィルムと黒紙を効果的に使っています。表紙からは想像できない内容で暗いところでそっと開きたいです。新しい原爆の表現を見た気がしました。 細川律子 平和の灯を絶やしてはならないという思いを切り絵に込めた祈りのようなしかけ絵本。開くと誓いの気持ちが重なります。 奨励賞
入選
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