おおしま国際手づくり絵本コンクール【2024年おとなの部】結果発表
『おおしま国際手づくり絵本コンクール』は、当館の開館を記念して始まり、今年で31回目です。
今年は222点の作品が寄せられ、応募者は10代~90代と幅広い年齢の方が手づくり絵本に親しんでいらっしゃることがうかがえました。
日常のささいな出来事や自分の経験を取り上げたもの、伝えたいことをテーマにしたものなど、手づくり感を大事にしている本コンクールらしい心温まる作品が多数集まりました。
ご応募いただいた皆様には、今後も手づくり絵本に取り組んでいただき、一層このコンクールが活気づくことを願っております。
来年もたくさんのご応募をお待ちしています。
今年は、素直に身近なテーマで綴られた作品が多い印象でした。絵本という固定概念にとらわれず、心が動いたものを真っ直ぐに表現しようという姿勢が、たとえ稚拙な表現であっても、やっぱりそこが一番大事なんだなと、僕にとっても初心に帰るような審査会でした。
今年も受賞者の年齢の高さに驚かされた!年齢に忖度した訳ではなく、純粋に優れた作品を選んだ結果だ。実体験は勿論、創作の中にも、これまでの経験に基づいたリアルがちゃんと息づいていた。やはり絵本にとって経験は大切な要素なのだと痛感させられた。
積み重なった人生経験はさすがと感じるエントリーが目立ったように思います。絵本を創る魅力にハマったそれぞれの充実度に甲乙つけ難く悩まされました。
印刷や装丁技術が手短になり出版物のような作品が増えましたが、手作り感溢れる仕事を垣間見ると初心に戻り感動します。ドライに見えがちな若い方の次回への制作意力に期待したいです。
今回、初めて審査員を務めました。応募作品を読ませていただき、皆さんの熱量と技量に感動!絵本は人生を豊かにする文化だと再確認しました。
最優秀賞文部科学大臣賞

『神様にであった―岩手の郷土芸能―』
緻密で精巧に作られた仕掛け且つ、その動きが郷土芸能の舞の動きにピタリと合わせてあり、あたかも祭りの場にいるような気持ちにさえなる素晴らしい出来栄えの仕掛け絵本となりました。審査後も何度も何度も開いて楽しませてもらいました。
驚くほど完成度の高い作品!その完成度ゆえ既製品と間違う程。お話は郷土芸能の紹介とシンプルだが、それぞれの芸能に見合ったアングル、ギミックを見事に使い、実際その場にいるかのような感覚を味わえる!特に大画面で飛び出す鬼剣舞は圧巻!
しかけ絵本の常連さん、今回は郷土芸能という独特な形態や歴史を題材に、実際の踊りの動きを魅力的に取り込み、とても完成度が高く仕上がりました。手元に置いて何度も広げて見たくなる清楚で美しい動きのある作品。傘の動きは意外に新鮮でした。
手の動きと花笠の回転が美しい田植踊り、大胆な構図を生かした飛び出す鬼剣舞など、しかけを生かした絵本作りが見事。人々の幸せや豊作を願う郷土芸能への敬意が文章からも伝わってきました。
金賞富山県知事賞

『ドジなライオンとわらうハイエナ』
個性的なデフォルメで動物達の存在感が際立っていました。絵本では躊躇しがちなライオンの捕食シーンを真っ直ぐに描くところも、動物の生き方をちゃんと伝えたいという気持ちが感じられ、骨太な作品に仕上げています。
表紙を見た瞬間に心を鷲掴みにされてしまった!動物達の表情、活き活きとした様!ホンマに素晴らしい!擬人化された動物作品が多い中、ここの動物たちは潔く生々しい!ヤンのドジ具合、その都度笑うハイエナそれぞれの愛らしい表情…ホンマたまらん!
ライオンの成長記録をハイエナの対応の変化で辿ります。アフリカンポップアートのカラフルさを彷彿させますが、大きく描いた動物たちの、目元の黒が特徴的な表情に毎回不思議な魅力を感じています。
ライオンとハイエナの表情が印象的!ハイエナの笑い顔が悔しそうに変化していくところなど表情や仕草からストーリーが読み取れて、思わずクスッと笑いました。登場する動物の習性がどこまでフィクションなのか気になります。
金賞射水市長賞

『牛乳ことば図鑑』
漢字を逆転させるという着眼点が新鮮でした。しかも仕掛け絵本にすることでテンポよく展開でき、読者に漢字を回転せさることで参加型のインタラクティブな作品に作り上げています。牛乳パックのカバーも魅力的で、見た目も美しい造形物になっています。
これまでに無かったアプローチ!考えた作者はホンマ凄い!実際の牛乳パックを使ったハードカバー等、こだわりを感じる。ただ同じギミックか続くので、やや単調な印象を受けてしまう。文字スペースを小さくして、絵を大きくすると、少し印象が変わるかも。
アイデア賞ですね。漢字の持つ意味のおもしろい部分に着目、一人でも親子でも共に読めて勉強できる仕掛け。個人的に出家と家出がうけました。牛乳パックを使ったのは牛乳×乳牛がきっかけでしょうか。
丁寧な作りと発想が際立っていました。図鑑を傾けると小気味よい音がして言葉が入れ替わるのが楽しい。身近な牛乳パックを使った装丁も親しめ、子どもたちが喜びそう!
銀賞富山県教育委員会賞

『ゆきだるま』
最優秀賞、金賞にも競り合ったほど完成度の高い作品でした。画力、物語、構成力、どれをとっても欠点の見当たらない面白い絵本です。銀色の表紙も魅力的でした。あとは絵の新鮮さや、ハッとするシーンの絵があればもっと上を狙えました。
増殖を繰り返す雪だるま最高!まさに雪だるま増殖パニック絵本!半観音開きもパニック感を煽って気持ちいい!含みをもたせた終わり方がワクワクする。欲を言えば、裏表紙にも何かしら含みがあると、いい意味で気持ち悪さが残って良いかも…。
迷いのない筆のタッチがバランスよく、画面がとても充実して勢いを感じます。増える雪だるま、雪だるま警報、雪国のものには共感できるとても面白いお話です。本展には初出品、是非他の作品も見てみたいです。
雪遊びの子どもたちやゆきだるまを生き生きと描き、見開き画面を生かした構図に魅力。SF映画のようなストーリーが絵とあいまって面白く、最後まで一気に読みました。銀色の表紙も素敵です。
銀賞(公財)射水市絵本文化振興財団賞

『フィルムで辿るタカクマ銀河夢幻軌道』
鉄道ファン、銀河鉄道ファンの情熱があふれる力作であり、大作です。楽しく制作されているところが伝わり、僕も一緒に楽しく宇宙の旅をさせてもらえました。
前作よりも完成度が高く、各鉄道のギミックは絶品!作品の隅々まで鉄道愛が溢れていてめくるたびに笑みが溢れてしまう。情報量が多いので、できればページ数を増やして、余裕を持って展開出来れば、もっと壮大な世界が描けるのでは…!
毎回、凝った作りに感服します。宇宙だから線路の代わりにフィルムの送り穴?フィルムは記憶・記録の意味も。アングルや着目点がマニアックでした。今回クマちゃんはいなくてもいいかも。
とにかく情熱に圧倒されました。鉄道が好き、アニメや映画が好きと伝わるしかけの作りこみがすごい!細部にもこだわりを感じ、鉄道ファンならずとも心魅かれる大作です。
銅賞射水市教育委員会賞

『ぴょこたんがえる』
なんといってもカエルの絵がのびのびと表現されていることです。躊躇なくデフォルメされたカエルの動き、ポーズは、それだけで読者にパーッと開放感を与えてくれます。言葉の選び方で、もっと魅力的な作品になるでしょう。
表紙のカエルに一目惚れしてしまった…。その表情、動きの何と伸びやかなことか!パートナーに出会うまでの命からがらの大冒険!緊張感たっぷりの鯉のシーンはシビれる!もう少し絵本として、場面の繋ぎ方を工夫できると、物語に入り込みやすいかも。
オノマトペでカエルの動きや周囲の様子を表現。おおざっぱだけど、リズミカルで愛着の湧くカエルです。最後にのんびりとしたオノマトペの展開があってもいいかな。
飄々とした絵に魅かれました。続く日照りに蛙の雨乞い。虹。ほのぼのと恋。「啓蟄を過ぎるとめだか池にどこからかカエルがやって来る。不思議です。」と、あとがきの言葉が心に残りました。
銅賞射水市教育委員会賞

『サンタクロースのアイスクリームパーティ』
大量に盛り込んだ細かい仕掛けのある大作です。とはいえ、僕は著者の持つ独特の甘酸っぱい清涼感のある少女の感性に魅力を感じます。主人公の感情の変化をもっと強調できればさらに良くなったと思います。
「がっかりだった」の始まり…上手い!子ども達がソリに乗り込むシーンは心躍る!夜空を飛ぶソリやおもちゃ工場等の見せ場のシーンが小さな表現となっているので、ページ数を増やしてじっくり楽しめると嬉しい。オレンジのパンダの結末も場面として欲しかった。
画面の中に開く箇所がとてもたくさん!作りたいシーンが細かく、お話のインパクトに欠けたかも。ジオラマのような屋根の俯瞰が好きです。
手をかけてたくさん作ってあるしかけが、物語の世界を広げています。心温まるストーリーがとてもよかった。サンタさんも小人も平等。おもちゃの個性に作者の愛情を感じます。
奨励賞
『きこりのじんべいさん』 | たけだ みつひろ | 一般 | 長野県 | 朝日新聞社賞 |
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『ポピーとゆうびんやさん』 | ゴノカミ ナツキ | 一般 | 埼玉県 | NHK富山放送局長賞 |
『とやまいきものびより』 | 絵・文/古屋 知世 タイトル文字デザイン/綴ル 表紙製本/ことり百貨店 | 一般 | 富山県 | 北日本新聞社賞 |
『みなもサーカス団、空の中へ』 | ふじかわ あい | 一般 | 広島県 | 北日本放送賞 |
『ささらばやしがきこえる』 | ふなき きょうこ | 一般 | 北海道 | チューリップテレビ賞 |
『さかなのなる木』 | 桐本 葉子 | 一般 | 大阪府 | 富山新聞社賞 |
『とかいにすみたかったヘビのむすめ』 | よしだ しょうこ | 一般 | 大阪府 | 富山テレビ放送賞 |
『がっこうなんてだいきらい!』 | かたおか なつき | 一般 | 兵庫県 | 北陸中日新聞賞 |
『ドアたちのおしゃべり』 | 文/としこ 絵/てつのしん | 一般 | 埼玉県 | 毎日新聞社賞 |
『とのさまドーナツ』 | まきの みそら | 一般 | 東京都 | 読売新聞北陸支社賞 |
『ポポのおみやげおいていくよ』映像にできそうな哲学的な読み物でした。『きこりのじんべいさん』安定した構図とタッチでお話もよかった。『ドアたちのおしゃべり』アパートに住む人々を思うドアたちのさえずりに心が温かくなりました。
『ドアたちのおしゃべり』としこさん てつのしんさんの絵とストーリーがぴったりでした。誰かに「おかえりなさい」と言われると、うれしいですね。
入選
『たまごでつくろう』 | 荒井 節子 | 一般 | 東京都 | 『ふうちゃんのワンピース』 | 新井 由美 | 一般 | 大阪府 | 『クラス会の和歌』 | 井頭 いく井 | 一般 | 富山県 | 『わすれんぼチコちゃん』 | おの みどり | 一般 | 愛知県 | 『おにのおかゆ』 | おもち | 一般 | 静岡県 | 『ぼくとむてきのおばけじいちゃん』 | かの あき | 一般 | 兵庫県 | 『おへそぱん』 | かまがた さとる | 一般 | 東京都 | 『くろくまくんとしろくまくん』 | かみいち しゅん | 一般 | 東京都 | 『なっぱちゃん、おおきいのよ。』 | かんか | 一般 | 東京都 | 『ゆどうふこぞう』 | 黒川 恵 | 一般 | 大阪府 | 『ヒップホップたかちゃん2』 | 西藤 高徳 | 一般 | 石川県 | 『なつのあさ』 | 澤田 恭子 | 一般 | 奈良県 | 『森のホッとスプリング』 | しらたま | 一般 | 神奈川県 | 『このめ、なんのめ?』 | せんごく ひな | しかけ | 大阪府 | 『ゆびがぴょこっ』 | たかはし かおり | しかけ | 東京都 | 『ねこのルルンのプレゼント』 | たさき きょうこ | 一般 | 神奈川県 | 『ひとりぼっちのりす』 | 塚田 有人 | しかけ | 埼玉県 | 『ここからみえるのだあれ?』 | つげ ひなこ | しかけ | 愛知県 | 『うちのタロウ見なかった?』 | 戸田 なお | 一般 | 宮城県 | 『ササラダニのダニー』 | なかがわ ひさえ | 一般 | 大阪府 | 『ぼくはブタ』 | なかむら さつき | 一般 | 石川県 | 『うこちゃんのあこがれのみづきせんせい』 | にしもと まこ | 一般 | 富山県 | 『ぎんなんマン んさがしのまき』 | 福田 美恵子 | 一般 | 茨城県 | 『ウシツツキ』 | ボランティアサークルひよこ | 一般 | 東京都 | 『ボボの“おみやげおいてゆくよ”』 | まえだ あんず | 一般 | 神奈川県 | 『やさいたちのプールあそび』 | マキノス | 一般 | 千葉県 | 『おやすみ『しらないどうぶつ』ちゃん』 | みこ | 一般 | 神奈川県 | 『乙田のきつね』 | 画/水落弘子 再話/生駒おはなしの会昔むかし班6名 | 一般 | 奈良県 | 『とうじのひのかげあそび』 | 文/宮坂 美樹子 絵/宮坂 真美 | 一般 | 埼玉県 | 『ときどき絵日記Ⅸ』 | 義積 喜美子 | 一般 | 兵庫県 | 『めろざえもん』 | わだ めろん | 一般 | 千葉県 |
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『ヒップホップたかちゃん2』さいとうたかのりさんは80代。能登半島大地震で被災された人を励ます思いに胸を打たれました。
『このめ、なんのめ?』七宝焼で動物の目そっくりに焼いてあり、驚きました。表紙、装丁などを工夫すると作品がもっと生きてきます。
『ひとりぼっちのりす』温かいストーリーと舞台に音楽がぴったり!
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