しんいんせんせいからの
メッセージ

じぶんの『ことば』と『え』で 
じゆうに たのしく あそんでくださいね。

ことしも みなさんの 
づくりほんに あえるの うれしいな。

松成 真理子
まつなり

低学年ていがくねんのみなさんへ

いまなんさいですか?
ねんれいによって、こころにひびくほんってちがうんです。
いちばんきなほんおもいうかべてください。
おとなになったら、たぶん、かわっています。
おなじほんでも、きなところがきっと、かわります。
いまのぶんにだけぴったり、ってほんがあります。
とくべつないっさつです。

つくるときもおなじです。
おとなっぽく、きれいにしあげるひつようはありません。
そういうのは、おとなになったぶんようにとっておきましょう。
おとなのぶんにはさかちしたってつくれない、いまのぶんにだけつくれるほんがあります。
それがいまのぴったり。
とくべつでさいこういっさつです。

高学年以上のみなさんへ

「誰かに読んでもらうためにつくる」ことを意識してみましょう。
表紙のき方、ページ数、読みやすい文字の配置かどうか、もちろん内容にも、それらのすべてに読み手の心象に想いをせてつくっているかどうかが表れます。
いいかえれば、そこがしっかりしていないと読み手になにも伝わりません。
作り手の頭のなかだけに存在する、閉じた世界になってしまいます。

読者の数だけ世界は広がります。
それぞれが違う世界です。
創造物はだれかの心と反応することで、はじめて完成します。

ちょっとしたアドバイス

絵+文=絵本

みなさんがつくろうとしているのは「絵本」です。
イラスト集(絵ばっかり)でも、小説本(文ばっかり)でもありません。

絵本の強みは「絵」と「文」、ふたつの道具が使えるところ。
ひとつだけでも強力ですが、ふたつをうまく組み合わせることですばらしい力を生み出します。
バランスよく使いましょう。

リズムはほう

ほう使いはほうをかけるためにじゅもんを唱えます。
英語では「呪文を唱えること」を「incantationインカンテーション」といいます。
「歌う(cantāreカンターレ)」という古代の言葉がかたちを変えたものです。

絵本は「声に出して読む」ものです。
だからほうといっしょです。
「リズム」が大切。
読み上げたとき「リズム」が生まれるように工夫しましょう。
歌うような「リズム」がきざめたなら、あなたの本はほうの本になります。

古代の言葉って?

ラテン語です

古代ローマ共和国の人たちが日常的に使っていた言葉です。 およそ2000年前のことですね。
ヨーロッパのしょ言語には、いまもラテン語のおもかげが残っています。

ほうについて調べると、よく古代の言葉と出くわします。 「ハリー・ポッター」のしゅれいを呼ぶじゅもんはラテン語でできています。
日本で実際に使われるしゅじゅもんにも古代語が使われています。
りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん」や「きゅうきゅうにょりつりょう」などです。
漢字ですね。
1700年くらい前に、中国で使われていた言葉が日本にわたってきました。
日本人にとっての古代語です。

なぜほうには古代の言葉が使われているのでしょう。
これはひとつの予想ですが、古くから伝わるほうだから、古い言葉が使われているのかもしれません。
「リズムがよい、力のある言葉」が多くの人に受け入れられたとき、ほうの言葉として2000年先の未来まで語りつがれるのではないでしょうか。
だって「きゅうきゅうにょりつりょう」なんて、もともと命令書のそえがきで「はやく法律のとおりにしなさい」って意味ですからね。
みなさんの絵本の言葉にもほうになるチャンスはあるってもんです。

絵はおはなし上手

じゅぎょうがはじまりました。
先生が話しています。
ずっと話しています。
ずーっとずーっとずーっと話しています。
そしてあなたはてしまいます。

先生の話に「リズム」があったらどうでしょう?
ちょっと楽しそうですね。黒板に字を書く音などはリズミカルです。
カツカツカツ、カツカツカツ、カツカツカツ。
すこしだけがんばって、やはりあなたはてしまうでしょう。

同じことがあなたの絵本でも起こります。

文ばかりだとたいくつで、わかりづらいです。
どうしたらよいでしょうか?

絵です。
ねむには、絵がこうかばつぐんです。
黒板に絵をかいてもらえれば、そんなにねむくはなりません(たぶんね)。

じつは絵はとてもおはなし上手です。
文が苦手なこともかんたんに説明してのけますし、絵でストーリーを伝えることだってできます。
絵もしゃべりたがっています。語らせてあげてください。

引き算が大事

かきたいことを思いついたとき、あなたのむねにはかきたい気持ちがあふれかえって、どんどん筆が進みます。
その結果、こまったことになります。

かきすぎてしまうのです。

文ばかりだとたいくつで、わかりずらい、というお話をしました。
絵と協力することで、もっと話が伝わりやすくなることもわかりました。
ですが、もともとの「かきたいこと」が多すぎると、協力するのもたいへんです。

文も絵もしゃべりたがりですから、ほうっておくとページいっぱいに情報があふれます。
クラス全員が同時に発表をはじめるようなものです。
みんなの話が聞こえますが、だれの話も心に残りません。

大切なのは引き算です。

もったいないと思っても、がまんして引きましょう。次回作で使えばいいんです。心の引き出しにしまっておきましょう。
書き過ぎやき過ぎにならないように、一番心に残ってほしいことに集中しましょう。

かきたいことを思いつかないとき

さんじょう」を試してみてください

いい文章を思いつきやすい3つの場所のことです。
具体的には「馬の上」「まくらの上」「トイレの上」です。
1000年前の中国の文学者が考えた裏ワザなので、実際にやってみるのがむずかしいものもあります。馬にのれない人は、散歩をするのがいいでしょう。

アイデアはうわの空のときに広がります。

さんは足りてますか?

散歩をするとアイデアがわきやすいのには理由があります。
歩くことで血のめぐりがよくなり、のうにじゅうぶんなさんが届くからです。
のうはたいへん食いしんぼうです。 全身で使うさんの20パーセント以上を使ってしまいます。

さんがちょっとでも足りなくなると、のうはうまく働きません。 頭がぼーっとしてなにも考えられなくなります。
ひどいときには、気分がふさぎこんでしまうこともあるんです。

正しい姿せいには自然に呼吸を深くしてのうさんけつを防ぐこうがあります。
ときどきつくえからはなれてからだを動かして、たまにはかんをするといいでしょう。

内容にあったページ数で

「かきすぎない」というお話をしました。
これは「物語の内容に見合ったボリュームでかこう」ということです。

絵本を開いた1ページについても、絵本全体についてもいえます。
ページ数が多ければ良いわけでも、少なければ悪いわけでもありません。
急テンポ過ぎず、間延びしない、ほどよいページ数を考えてみましょう。

具体的な数字が知りたい

本文のページを「8の倍数」になるようにつくる

印刷機の版(印刷のために文字や図形を彫った板)や紙をむだなく使うための基本ページ数です。ルール違反するとまっ白なページが余分に入ったり、印刷料金が上がったりします。

「手づくり絵本」をつくるときは気にする必要はないですが、将来印刷会社で製本してほしい場合はしきしておくといいでしょう。

絵本なので短めに

長くても28ページから32ページぐらいを目安にしましょう。

内容にあったボリュームを追求した結果、40ページをこえることもあるかもしれません。しかし絵本ですから基本的には長すぎないのが望ましいです。

表紙は「顔」

本には大きな弱点があります。
開いてもらわないと、なにも伝わらないことです。
そのために表紙があります。

表紙は、絵本の「顔」です。
絵本の第一印象を決める大切な「かお」です。
思わず手に取りたくなるように描いてみましょう。
どんなに中身がすばらしくても、表紙がり合いで読んでもらえないのでは、もったいないですからね。

トータルコーディネートしよう

表があれば、うらがあります。
表紙があれば、うら表紙があります。
さらにそのうらには、かえしがあります。

表紙、かえし、うら表紙、
ぜんぶひっくるめて、ひとつの作品です。

「トータルコーディネート」というわざがあります。
「こういうふうに思ってほしいな」って考えに合わせて、すみずみまで整えることです。
たとえば、服のテーマが「夏」だったら、くつや小物も「夏」っぽいものにそろえる。 デッキのテーマが「ドラゴン」だったら、ケースやスリーブも「ドラゴン」っぽいものにそろえる。
形や、色や、素材についてもよく考えて、ぴったりのものを選ぶ。
全部の息がぴったりそろうと、だれが見てもそれとわかる「伝わる力」が生まれます。

絵本もいっしょです。
物語に合わせて、表紙やうら表紙、かえしをコーディネートしましょう。
絵をかいたり、色を合わせたり、素材を変えたり、ちょっとしたオチを仕込んだり。
そうすることで絵本のりょくがぐーんと増します。

まして、みなさんがつくるのは「手づくり絵本」です。
どんなアイデアだって自由に試すことができます。

そう工夫を楽しみましょう。