おおしま国際手づくり絵本コンクール【2025年おとなの部】結果発表
『おおしま国際手づくり絵本コンクール』は、当館の開館を記念して始まり、今年で32回目です。
今年は236点の作品が寄せられ、応募者は10代~80代と幅広い年齢の方が手づくり絵本に親しんでいらっしゃることがうかがえました。
日常のささいな出来事や自分の経験を取り上げたもの、伝えたいことをテーマにしたものなど、手づくり感を大事にしている本コンクールらしい心温まる作品が多数集まりました。
ご応募いただいた皆様には、今後も手づくり絵本に取り組んでいただき、一層このコンクールが活気づくことを願っております。
来年もたくさんのご応募をお待ちしています。
今年から審査させていただくことになり楽しみにしていました。期待を上回るほどのエネルギッシュな作品が多く、どれも刺激的でした。絵本を読んだ後に年齢を確認してびっくり、なんてことも多くありました。私もいつまでもこんなふうに絵を描いていたい。そんなことを思わせてくれる審査会でした。
絵本作家。1978年岐阜県生まれ。東京造形大学美術学科卒業。絵本制作以外にも、イラストレーター、絵本を元にしたワークショップなどの活動をしている。主な作品に『チーター大セール』(絵本館)、『カエルのおでかけ』(フレーベル館)、『だるまだ!』(好学社)、『バナナじけん』(BL出版)、『うしとざん』(小学館)ほか多数。東京在住で3人娘の父。
今年も年齢の高さに…と思いきや驚きの変化が!受賞者の約半分が30代。しかも初めての応募という、若手(新人)の活躍が光る結果となった!ただ常連さんも負けてない!さらにスキルアップし 最高の作品を作り上げてきた!この新旧入り混じった新しい流れがこれから先どうなって行くのか…目が離せまへん!
絵本作家。1972年愛媛県生まれ。大阪デザイナー専門学校絵本科卒業。「あとさき塾」「メリーゴーランド絵本塾」で絵本を学ぶ。主な作品に『十二支のおはなし』『おばけのきもだめし』(岩崎書店)、『むしプロ』(教育画劇)、『学校ななふしぎ』(偕成社)『ウルトラマンとぼくらVS怪獣ぐんだん』(円谷プロ監修/ポプラ社)『アブナイこうえん』(ほるぷ出版)他多数。
今年はしかけ絵本に力作が多かったように感じます。十代の応募は残念ながら減りましたが、初出品作品がトップ受賞に登場してきたのはとても嬉しく、また益々充実してくる常連作品に楽しく悩まされました。
日本画家、人形・影絵 mao company代表。1963年生まれ。射水市在住。大阪芸術大学日本画専攻科修了。日本画制作のかたわら舞台活動も手がける。和楽器と影絵のユニット「KAGEN」のメンバーとして各地で公演。(原画製作、影絵操演)絵本「戦争を読む・平和を考える19450806星は見ている」の挿絵を手がける。
心のこもった宝物のような作品がいくつもありました。絵と言葉の展開がほんとうに惜しいものも。年配の方の瑞々しい感性に脱帽。
絵本専門士。1961年生まれ。富山市在住。成蹊大学文学部卒。JBBY・日本児童文学者協会会員。こども園、小中学校等、地域で様々な絵本を朗読・紹介。書評誌・ラジオ等で子どもの本・絵本紹介多数。かすてら文庫主宰。親子で楽しむ絵本の時間を大切に活動している。
最優秀賞文部科学大臣賞

『おやすみ もふどん』
そのタイトルからこれから寝ようとしている恐竜のお話というのがすぐに想像され、キャラクターのもふどんが、ふとんとぬいぐるみをひきずっている姿が愛らしく読む前からワクワクさせれらました。内容ももふどんが寝ている姿と、今日の出来事の様子がうまく構成されていました。
シンプルだけど「おやすみ絵本」としてしっかり完成されている!楽しかった事を思い出しながら、無理なく自然と眠りに落ちていく様子はお見事!現実のもふどんと回想との自然な一体表現も素晴らしい!それぞれの場面でもふどんの表情が変わるとより魅力的かも。
色も、塗り方の風合いも、お話にしっくりきていて、画面の使い方も上手く、いい感じに力が抜けたところに、ほっこりできました。さつまいもの布団がなぜかとても印象的で。(欲しいかも笑)
恐竜の子が今日一日あった楽しいことを思い出しながら眠りにつく。寝る前の親子の会話が聞こえてきそうなあたたかさがある。
金賞富山県知事賞

『ゆきのひのひっこし』
家の中を絵にするとき、ものをひとつひとつ描いていき、それらをどのように配置するか、どんな壁紙かなどで住んでいる人の日常が表現できます。この絵本にはきつねのおじいさんとおばあさんが登場します。決してものは多くありませんが、素敵な生活をしていそうでほっこりできる絵本でした。
扉の家の断面図にワクワクが止まらない!描き込まれた部屋、道具から二人の慎ましやかな生活ぶりがちゃんと伝わってくる。片ページが続くので、まとめられる場面は1見開きで表現できればメリハリが生まれそう。裏表紙が真っ白なのは勿体無い。
心温まるストーリー。淡い色合いが雑な気もしますが、気負いのない線がすみずみまで見させてくれています。春は思い切って鮮やかでもよかったかも。ページを開いた時にわあ〜〜春だ!と思わせてしまうような。
絵に温かみがあり、きつねの夫婦のわび暮らしがほのぼのと描かれた。旅人の訪れと別れ。また会えると信じて待つ気持ちが寒い冬を乗り越えさせる。
金賞射水市長賞

『森のふたごと風のしっぽ』
ページを開いたときに飛び出してくる迫力だけではなく、森の木々が風にそよいでいる様子など、細やかなしかけが目を見張りました。しかけと絵がうまく組み合わさっていて、全体を通してのストーリーも読み応えのあるものになっていました。
最初の森の場面上手い!木の揺れにドキドキする!大波の場面は迫力満点!イルカのギミックでは皆が声を上げた!ただ帰ってくるきっかけの弱さが気になった。気がつけば…ではなく誰もが納得できる展開が見つかるとより物語に没頭できると思う。
毎回気持ちのよいアングルの風景を見せてもらっています。作りもとても丁寧です。見ていていつの間にかリキ、ハナ、風のしっぽを忘れています。リキとハナの会話は無くてもよいのかも。
ざわざわ揺れる木や、みの虫ブランコ、海の波、風を詩的にしかけで表現した。キャラクターのくまを画風に融合して描くとさらに深みが出る。
銀賞富山県教育委員会賞

『ちゃばしらちゃんのおでかけ』
素朴なかわいさがありました。途中、ちゃばしらちゃんが近づいてくるしかけがありますが、ショート動画を見ているかのようでした。絵本はページを開くごとに大きな展開になりがちですが、このしかけは細かな動きが表現できていました。しかけと全体の印象がよくマッチしていました。
ちゃばしらちゃん…可愛い!ゆっくり寄ってくるギミックたまりません!各お店や飲み物の表現も可愛らしく、愛情を感じる。ただ中心にある飲み物のギミックが、(サイドは変化があるものの)どれも似た表現なので、そこを工夫できればより楽しめるかも。
シンプルでわかりやすいしかけです。そのため茶柱の動きや湯気などアイデアが湧き、審査会でも盛り上がりました。インドのチャイやベトナムの蓮茶などもちゃばしらちゃんに飲みにでかけてほしいです。
縁起のいい茶柱がうきうきとおでかけする様子が、しかけと言葉で楽しく美しく丁寧に表現された。
銀賞(公財)射水市絵本文化振興財団賞

『もうすぐ』
ものがたくさん描かれているわけではありませんが、見開きの構図、色彩バランス、キャラクターの表情がずば抜けていました。柿たちに顔と手足がついていて走っている様子が描かれていますが、その中のひとつだけ足が三つ。でも全然気にならないほど、絵におおらかさがあり気持ちのいい絵本でした。
お野菜がお月さんに向かって歩く姿…可愛い。それぞれの向かい方、表情がとても愛らしい。月の場面は「待ってました」と声を上げた!できればお団子さんも自分で歩いて欲しかった。人間不在の方が、もっと幻想的で魅力的なお話になりそう。
ほのぼのとした秋の野菜たちが嬉しそうに画面を流れていきます。ページをめくるのがワクワク。だんごや三宝も自分で走っていき、みんなで勢揃いすればよいかも。
十五夜のお月見。おいもが走る。さらりと描いた言葉と線にユーモアが光る。秋の色彩と筆の味わい。
銅賞射水市教育委員会賞

『ふしぎなしんかんせん』
東名高速道路は途中で右ルートと左ルートと分かれる箇所がありますが、東海道新幹線も地上ルートと海中ルートがあれば楽しいのに……。この絵本には海中ルートがあります。変化していく海中と乗客をページをめくるごとに楽しめました。全体の色彩感覚がすばらしいです。
海に入っちゃう新幹線…それだけで面白い!海の世界も独特で楽しそう!竜宮城からの展開には笑ってしまった。ただどうやって元に戻るのか…が気になる。そこを描いてあげないと不安が残りそう。海に入るシーンもきちんと描いてあげるとお話に入りやすいかも。
色紙の貼り絵、むら染めの和紙で海中や空を表現。列車を降りてみんな老けてしまったページはもっと大胆にクローズアップしてもよいかも。
和紙の素材を活かし、画面を大きく使って新幹線の不思議旅行の世界を楽しく描いた。乗客の表情が愉快。背景や小物も丹念に制作。表紙から始まり、扉、裏表紙までを絵本として巧みに表現した。
銅賞射水市教育委員会賞

『タカクマ銀河幻影軌道 星めぐり星座盤』
無限に広がる宇宙そのものを表現していかのようなしかけで、ページを開くごとに思わず声を出してしまうほどの大迫力でした。飛び出してくるだけでなく、見ているとその宇宙に吸い込まれるかのようで、読後感はふわふわと自分が浮いているかのような気分になりました。
前作よりもシンプルな印象と思いきや!表紙のギミックに意表を突かれる!ページを捲る度に想像を超えて広がる星座、星雲のギミック、美しさに思わずため息がこぼれる。電車、駅の表現も健在!ほんの少し場面を繋ぐテキストがあるとより魅力的になると思う。
毎回グレードアップ!開いた時の動きと大きさに感動します。個人的に付録としてまとめの星座盤ページが欲しかったです。
ダイナミックに展開するしかけの素晴らしさ。アンドロメダが立体的に湧き起こるなど、しかけに物語性を感じる。絵と言葉で物語をどう展開するか次に期待。
奨励賞
『ぴーなつおばさんのバスツアー』 | わだ めろん | 一般 | 千葉県 | 朝日新聞社賞 |
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『わたしのすきなこと』 | くまい まさこ | 一般 | 愛知県 | NHK富山放送局長賞 |
『れいぞうこのプリンくん』 | のはら あきら | 一般 | 富山県 | 北日本新聞社賞 |
『まいにちまねきねこ』 | 神尾 京 | 一般 | 大阪府 | 北日本放送賞 |
『やくそく』 | かみいち しゅん | 一般 | 東京都 | チューリップテレビ賞 |
『ふーちゃんでーちゃん』 | しおぱん | 一般 | 富山県 | 富山新聞社賞 |
『鐘姫ものがたり』 | 領家手づくり絵本の会 8名合作 | しかけ | 埼玉県 | 富山テレビ放送賞 |
『かゆい~かゆい~』 | 高林 ひろみ | 一般 | 愛知県 | 北陸中日新聞賞 |
『とやまのしろえびのおもてなし』 | つげ ひなこ | しかけ | 愛知県 | 毎日新聞社賞 |
『羊を数えに』 | 果山 英茂 | しかけ | 東京都 | 読売新聞北陸支社賞 |
『ピーナツおばさんのバスツアー』
高齢化社会と時代性を笑いでさりげなく示唆。必要な絵本なのかも。
『かゆい?かゆい?』
個性的な色合いと動物の形。次のテーマを期待してしまいます。
『やくそく』
カラー段ボール紙での貼り絵。完成度が高いからこそ視線に注意。シンメトリーなポーズや配置を変えてみたら見え方が変わるかも。絵とお話。ことばがなくてもお話をイメージしながらページを辿ることができると、絵本は年代も国境も越えて行きます。そんな絵本に出会いたいです。
『ふーちゃんでーちゃん』の「だいじょうぶ」という言葉にほろり。続きが読みたい。
『とやまのしろえびのおもてなし』ファスナー使いがすごい。白エビの殻をむいたり、せんべいを焼いたりして遊べそう。
入選
『やくそく』 | 石川 千佳子 渡壁 敦子 | 一般 | 富山県 | 『仏の顔は3度まで』 | 尾山 舞子 | 一般 | 富山県 | 『まねっこカラス』 | かとう まさお | 一般 | 北海道 | 『うちゅうからきたらっか星人』 | きむら こげ | 一般 | 千葉県 | 『ようかいブロマイド』 | くうたろう | 一般 | 大阪府 | 『はなちゃんとマリアンヌ』 | くさか ひろこ | 一般 | 大阪府 | 『のとっこたかちゃん』 | 西藤 高徳 | 一般 | 石川県 | 『とびだししかけえほん 平家物語』 | さだ ゆか | しかけ | 東京都 | 『はまあるき』 | しづか なお | 一般 | 東京都 | 『わらわないロボットさん』 | そらの ねい | 一般 | 埼玉県 | 『やけどしたおに』 | たけだ みつひろ | 一般 | 長野県 | 『三太のサンタ』 | 竹本 温子 | 一般 | 兵庫県 | 『かぎやん』 | たなか あやな | 一般 | 大阪府 | 『きみがいるから』 | 文/としこ 絵/てつ | 一般 | 埼玉県 | 『おじいちゃんがくれたもの』 | なかむら さつき | 一般 | 石川県 | 『うこちゃんのいもうと ももちゃん』 | にしもと まこ | 一般 | 富山県 | 『ぐーさんちょきさんぱーさん』 | 野田 恵子 | 一般 | 福岡県 | 『おばあちゃんのにわ』 | 婦木 直子 | しかけ | 兵庫県 | 『はくしょんころころきたきたきたー』 | 福田 美恵子 | 一般 | 茨城県 | 『カイト~たか~』 | ふなき きょうこ | 一般 | 北海道 | 『あなたにあえてチョウうれしい~』 | 作/古屋 知世 タイトル文字/綴ル 製本/ことり百貨店 | 一般 | 富山県 | 『ぎったんばっこん』 | ボランティアサークルひよこ 10名合作 | 一般 | 東京都 | 『エールのごきげんなにちようび』 | みこ | 一般 | 神奈川県 | 『きつねと人形浄瑠璃』 | 画/水落 弘子 文/生駒おはなしの会昔むかし班 | 一般 | 奈良県 | 『にげろにげろ』 | 宮崎 いづみ | 一般 | 愛知県 | 『まいごのねずみ』 | みゆき | 一般 | 埼玉県 | 『おみやげ』 | 森 アツシ | 一般 | 千葉県 | 『ぼく、かいじゅう』 | やぎ はるか | 一般 | 富山県 | 『タオのいちにち』 | 芳村 みちる | 一般 | 東京都 |
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『うこちゃんのいもうと ももちゃん』
妹が生まれ、揺れる気持ちのうこちゃん。見守る家族や周囲の大人のやさしさ。物語が手芸で巧みに表現され、心に残る。
『ぐーさんちょきさんぱーさん』
思わずチョキチョキしてしまうちょきさんに笑った。楽しい!
『きみがいるから』
やさしい気持ちが伝わる。『ぼく、かいじゅう』絵の構図や物語の展開がうまい。キミとボクは永遠の課題。
『平家物語』
日本の古典をしかけと文章で表現する試みに感動。中学生にも。
『おばあちゃんのにわ』
おばあちゃんの庭の歳時記。シンプルなしかけと言葉に魅かれた。
『やくそく』
呉羽梨の由来を布で表現。梨の形に広がるのがいい。
『タオのいちにち』
飼い犬への愛情が伝わってくる。
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