おおしま国際手づくり絵本コンクール【2023年おとなの部】結果発表
『おおしま国際手づくり絵本コンクール』は、当館の開館を記念して始まり、今年で30回目です。
今年は215点の作品が寄せられ、応募者は10代~80代と幅広い年齢の方が手づくり絵本に親しんでいらっしゃることがうかがえました。
日常のささいな出来事や自分の経験を取り上げたもの、伝えたいことをテーマにしたものなど、手づくり感を大事にしている本コンクールらしい心温まる作品が多数集まりました。
ご応募いただいた皆様には、今後も手づくり絵本に取り組んでいただき、一層このコンクールが活気づくことを願っております。
来年もたくさんのご応募をお待ちしています。
今年は、例年以上に応募作品全体のクオリティーが高くておどろきました。順位をつけなければいけないのが苦しいほどで、たとえ入選作であっても、価値がある入選だと思ってください。
今年もバラエティーに富んだ作品に囲まれ、楽しくヒーヒー言いながら、審査させて頂きました。作品の印象としては、特に年配方の勢いを感じました!絵本を作る上で想像力とは別に、経験という引き出しの大切さを改めて実感しました。
コロナが落ちついて日常を取り戻した今年は、どんな作品に出会えるかとわくわくしながら一冊ずつ丁寧に読みました。18歳~89歳の幅広い年代。テーマはそれぞれですが、どの作品にも誰かに伝えたいという熱い思いが溢れていました。今回が最後の審査になりました。これまで各地から寄せられたたくさんの手づくり絵本に出会えて本当に幸せでした。これからも創作への情熱を忘れず、継続して作品を応募されますように願っています。
幅広い年層からエントリーがあることも特徴となりつつありますが、常連も初出品も含め今年は 80 代が7名!絵本は長~く創る魅力にも溢れているんだと感動しています。平均年齢は 51歳。今後の若い方の作品にも期待しています。
最優秀賞文部科学大臣賞

『タコマシーン』
モニカさんの強烈なオリジナリティーを絵本の型にうまくおさめて、読者を迷わせずモニカワールドに引き込むことに成功しましたね。ストーリーだけでなく、あえて関西弁を効果的につかったり、端々に海の生物の面白さを伝える工夫がされていて、何度も読み返して楽しめる魅力的な作品に仕上げています。満足のいく受賞作です。
タコマシーンって…表紙の無表情のタコに早くも期待が高まる。海上で主人公がのんびりお喋りをする現実世界。海中でタコマシーンがウニョウニョ動き回る妄想世界。2つの世界の同時進行が実に自然で見事!ゆるそうに見えて、ちゃんと環境問題をとらえている!「妄想型環境絵本」の誕生!
海のごみを取るために未来からやってきたタコマシーン。口からあかしやきを出して作った網でごみを集め、変な緑の入れ物を出して掻き回し、きれいな水に変えて海に戻して帰っていく。現代の海の汚れを関西弁でやさしく警告している。明るく色彩豊かな絵本です。
シュ―ルで鮮やかなこの世界観に驚いてはや4年?毎回楽しみにしていました。根気よく塗り込んだ色鉛筆のタッチ、ひとつひとつ気になってしまうキャラクター。そして立派なテーマを持ちながらも力の抜けた大阪弁での展開。細かい所も見逃すまいと見入りました。どんどん突き抜けていってください。
金賞富山県知事賞

『あぶらあげさん』
正直完成度では一番でした。テーマの奇抜さ、笑いのセンス、構成力、画力も申し分なく、すでに出版されているような出来の作品です。特にキャラクターの感情表現がうまく、読むうちに彼らを応援したくなるほど物語に入っていけました。
表紙の絵に惹かれる。袋に入ってポーズをとるあぶらあげさん…シュールで可愛い!とんびへの愛にまっしぐらの彼女も魅力的だが、献身的に彼女を支えるごはんくんにキュンとさせられる。思い続ければ恋は実る!究極の「恋愛料理絵本」!できれば他の恋愛も覗いてみたい。
毎晩のように姿を変えて食卓に並ぶあぶらあげだが、冷ご飯と結婚しておいなりになるのが面白い。あぶらあげの表情が楽しく、あぶらあげ好きにはたまらない絵本です。
このまま出版されてもおかしくない出来映えだと思います。けなげなごはんくん、つれないとんび、台所用品の中で頑張るあぶらあげさんのランニングマシーンは何を御利用でしたか?ほかの作品も是非見てみたいです。
金賞射水市長賞

『お月さまとわたし』
うっとりするほどの美しいしかけと、窓を押し広げて月が部屋に入ってきたり、その月に墨汁をかけて撃退したり、またその汚れを洗ってあげたりという突飛なエピソードで、最後のページまでワクワクしながら読みました。しいて言うなら表紙の惹きが弱いのが気になる程度ですね。
月へ行くお話は数あれど…月がやってくるという滑り出しに、心を鷲掴みにされた!部屋に入ろうとする月に墨汁で応戦する…なんという展開!月を洗う場面では、思わず声を上げてしまった。最後の見開きが詰め込み過ぎな感じがしたので、もう1見開き増やして余韻を残せたら良かったかも。
表紙は地味だが、月とくればファンタジーかなと開くと、何としかけいっぱいの月の世界が広がる。自由自在に月と遊べる年代の子ども達と楽しみたい一冊です。
素敵なストーリー。月の話はたくさんありますが、とても身近に感じてそれでいてファンタスティック。月のお掃除が好きです。部屋と空を繋げるしかけも奥行きを感じますが、表紙にもう少し工夫が欲しかったです。
銀賞富山県教育委員会賞

『フィッフィへのおたんじょうびプレゼント』
絵がとても魅力的です。リアルな動物でありながら優しさに溢れています。誰かへのプレゼントを考えることを貴く思わせてくれる展開で、暖かい気持ちにさせてくれる作品でした。答えが謎のまま終わるのも良いと思います。
とにかく絵が美しい!表紙のプレゼントで誕生日への期待が高まり、ワクワクさせられる。登場する動物達もそれぞれが魅力的。一つだけ…フィッフィが誰なのか…最後まで分からないのが気になった。そのままでもいいけど、読者の為にもう少しヒントがあると嬉しい。
柔らかい色合いの表紙にプレゼントが並んでいて、その中身が明かされていく。果たしてプレゼントをもらうフィッフィってだれ?と、親子で語り合いながら楽しめる絵本です。
あたたかい作品です。色もタッチもふんわりして、動物たちの描写も素敵です。友達のことを考えるそれぞれの思いが続いて、ほんのちょっとヒントを感じながら、でも最後までフィッフィが誰だか分からない展開は個人的に好みです。
銀賞(公財)射水市絵本文化振興財団賞

『むしとりに』
最初のバッタとカマキリの迫力ある飛び出しに心を奪われ、その後のダンゴムシやセミの抜け殻も「おお!」っとうならせるフォルムで最後まで驚きがありました。また作りも美品でした。
最初のバッタで見事にやられた!トレーシングペーパーの羽根にニヤリ!バッタがいるなら…とページをめくると…カマキリ!見事期待に応えてくれた!虫に合わせてのアングルの工夫は絶妙!特に手のひらのダンゴムシとセミの抜け殻には拍手!
表紙はしかけ絵本と思われないが、開くと次々、子ども達の好きな虫が立ち上がり、わっと叫んでしまう!バッタ、カマキリ、セミ、ダンゴムシなど。どの虫もリアル。文庫で読んだら取り合いになってしまうでしょう。
めくったとたんに飛び出して来たバッタ。カマキリ。ワクワクさせるダイナミックなしかけです。そしてダンゴムシ。平たい本が丸いものを生むって面白いですね。
銅賞射水市教育委員会賞

『あめがやまないまち』
故郷への愛情とは、けして簡単に説明できるものではないのだということを再認識させられる作品で、胸に刺さるものがありました。シンプルな絵にもセンスを感じる大変好感の持てる作品になっています。例年ならもっと上の賞になっていたことでしょう。
「あめがやまない…」一見ネガティブなタイトルだが、雨を楽しんでいる人々の暮らしが丁寧に描かれている。レインコートの設定にはほっこり。大人が有料なのもリアルで面白い。欲を言えば、町のエピソードがもう少し見たかった。
雨の日は誰でもうっとうしいもの。その雨の日にもこんな楽しいことがあるよと、静かに教えてくれるやさしい絵本。雨の日に雨の音を聞きながら読みたい絵本です。
降り掛かる事象をポジティブに考え生きる人々が住む町。あめを違う言葉に置き換えて深く感じ入ったお話です。細いラインのタッチと淡い色も緩やかで、インパクトはありませんが幸せを感じます。
銅賞射水市教育委員会賞

『ようかいみーつけた』
前年同様にページごとに心踊る仕掛けを見せてくれました。これを見た子どもたちの喜ぶ笑顔が目に浮かびます。素晴らしいアイデアをもっと見たいと思わせてくれる作品です。
今回は妖怪がテーマ。前作の余韻も手伝って期待が膨らむ!まずはろくろくび。そうなるよね!次々にページをめくる。それぞれの妖怪の見せ場を、それに合った仕掛けで見せてくれて気持ちいい!最後のおばあちゃんは!?後ろ姿故に期待してしまう♩
これ程ビッグな妖怪布絵本は初めて!大きな布表紙に回している白い手が妖怪の世界へ誘っている。まるで妖怪の家のようだ。ぞくぞくしながら開く絵本です。
今回も力作です。そもそも妖怪は不思議で奇妙なもの。もっと意外性のある表現も模索してみてほしいです。オリジナル我が家の妖怪?にも期待します。
奨励賞
『犬と笛』 | 水落 弘子 生駒おはなしの会昔むかし班 |
一般 | 奈良県 | 朝日新聞社賞 |
---|---|---|---|---|
『わんころ。』 | かたおか ゆかこ | 一般 | 京都府 | NHK富山放送局長賞 |
『ゆめのなかのみずうみ』 | おかやま かん | 一般 | 富山県 | 北日本新聞社賞 |
『Points of views of BEAUTY 心がみてるもの』 |
SUZU | 一般 | 東京都 | 北日本放送賞 |
『月夜に狩りをした風になったオオカミ』 | 高林 ひろみ | 一般 | 愛知県 | チューリップテレビ賞 |
『夜空の狼』 | たけだ みつひろ | 一般 | 長野県 | 富山新聞社賞 |
『ソンテウくんのぼうけん』 | 村上 遼 | 一般 | 東京都 | 富山テレビ放送賞 |
『モンちゃんの青春』 | ヤムおじさん | 一般 | 福井県 | 北陸中日新聞賞 |
『見沼のたつまき』 | 領家手づくり絵本の会 | しかけ | 埼玉県 | 毎日新聞社賞 |
『森のふたご 穴に落ちる』 | わきた ようこ わきた たかし |
しかけ | 神奈川県 | 読売新聞北陸支社賞 |
奨励賞の作品で心に残ったものは、タイの赤い自動車を克明に描いた村上遼さんの『ソンテウくんのぼうけん』次の作品が楽しみです。
日本とカナダの狼のくらしを物語にした、共に80代のたけだみつひろさんの『夜空の狼』と、高林ひろみさんの『月夜に狩りをした風になったオオカミ』。
地元奈良の昔話を再話し、絵本に残している生駒おはなし会昔むかし班の『犬と笛』など。
他にも心打つ作品が多数ありました。
奨励賞からいくつか。
『ゆめのなかのみずうみ』83 歳!勢いのある墨画タッチでの動物の表現が印象的でした。
『ソンテウくんのぼうけん』19 歳!鮮やかな色、緻密な描写、他の作品も見たいです。
『Points of views of BEAUTY』24 歳、このような本が必要ないことを祈るけれど、必要だから気になるのかも。絵本のひとつの役割を垣間見た気がします。
そのほか、今回も個性的で興味深い作品がたくさんありました。次回もとても楽しみにしています。
入選
『こんにちは、ミャンマー』 | 一般社団法人DAC未来 サポート文化事業団 |
一般 | 東京都 |
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『しましまちゃんのおべんとう』 | 井上 知子 | 一般 | 東京都 |
『いってきます』 | 上田 せつこ | しかけ | 兵庫県 |
『こすずめのおはなし』 | 桶田 幸子 | 一般 | 東京都 |
『マダム・ミロバ ひみつのおともだち』 | おの みどり | 一般 | 愛知県 |
『コバンザメくんはヒマラヤでダージリンティーがのみたい!』 | 楽学申 | 一般 | 兵庫県 |
『やまのまきばのあなうさぎ』 | かなお みほこ | 一般 | 神奈川県 |
『ともだち』 | かんまき きよみ | 一般 | 大阪府 |
『しろいくれよん』 | 北森 紀子 | 一般 | 京都府 |
『まほうのイト』 | 京谷 千音世 | 一般 | 富山県 |
『そらとぶミジンコ』 | 桐本 葉子 | 一般 | 大阪府 |
『きっぷくん』 | 久保田 寛子 | 一般 | 山口県 |
『ひま虫にゅうどうとおとこのこ』 | くろかわ めぐみ | 一般 | 大阪府 |
『おばけのキャンプ』 | 小林 ゆたか | 一般 | 長野県 |
『ヒップホップたかちゃん』 | 西藤 高徳 | 一般 | 石川県 |
『とんでいったしかせんべい』 | 澤田 恭子 | 一般 | 奈良県 |
『ふくろうとしっぱいちゃん』 | すぎやま かなめ | 一般 | 愛知県 |
『9月のかいぎ』 | 鈴木 千恵子 | 一般 | 千葉県 |
『どんぐりこうえん』 | そめや さゆり | 一般 | 千葉県 |
『うこちゃんのだいじな・・・!?』 | にしもと まこ | 一般 | 富山県 |
『おにのおやど』 | にった かずよし | 一般 | 埼玉県 |
『だっぴっぴ』 | 福田 美恵子 | 一般 | 茨城県 |
『さんちょうであいまちょう』 | 古屋 知世 綴ル ことり百貨店 |
一般 | 富山県 |
『いつも通りしょうてんがい』 | ボランティアサークルひよこ | 一般 | 東京都 |
『きょうのぼく』 | むらた ゆり | 一般 | 長野県 |
『まぁるぃじかんわり』 | 森 アツシ | 一般 | 千葉県 |
『みどりのびょういん』 | 山台 直子 | 一般 | 大阪府 |
『ときどき絵日記Ⅵ』 | 義積 喜美子 | 一般 | 兵庫県 |
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