こころ育てる絵本との出会い

マグちゃん通信

2026 4 - 5 vol.97

絵本作家インタビューかねこ まき

マグちゃん通信vol.96 表紙『いちごりら』(麻生かづこ/作 ポプラ社)より
表紙『いちごりら』(麻生かづこ/作 ポプラ社)より

読んだ方が「なんじゃこりゃ?」とびっくりして

ちょっとものの見方が変わるような、

たのしい絵本をつくりたいです。

プロフィール

かねこ まき

絵本作家。

埼玉県出身。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業。

絵画教室ルカノーズで社会人に美術を教える傍ら、キルタースペース絵本勉強会、あとさき塾などで絵本創作を学ぶ。

ピンポイント絵本コンペ最優秀賞受賞をきっかけに、2019年『ちゃのまのおざぶとん』(アリス館)で絵本作家デビュー。

『めんぼうズ』(アリス館)が第14回ようちえん絵本大賞入賞、第6回未来屋えほん大賞入賞。

絵を担当した『いちごりら』(ポプラ社)が第17回MOE絵本屋さん大賞4位入賞、第9回未来屋えほん大賞3位入賞、第35回けんぶち絵本の里大賞びばからす賞受賞、第17回ようちえん絵本大賞入賞。

『せっけんアワー』(文研出版)、『ありがとうのもり』(金の星社)、『つまようじの王さま』(文研出版)等がある。

絵本原画展

2026年4月2日(木)~5月27日(水)

『いちごりら』 『いちごりら』
『いちごりら』 麻生かづこ/作 ポプラ社 いちごのすきな ごりらさん いっぱいいっぱい たべたらね いちごりらになっちゃった!リズミカルな展開とシュールなイラストで、見れば見るほどクセになる! ことばあそびと迫力ある絵変わりが楽しい、読み聞かせで大人気の絵本。
『めんぼうズ』 『めんぼうズ』 『めんぼうズ』
『めんぼうズ』 アリス館 ぴょんこ ぴょんこ ぴょんこ ぴょんこ…。夜になると動き出す。いろいろな家から出てきた、めんぼうたちが向かうのは?あなたの家の綿棒たちも、隣の家の綿棒たちも、動いているかも? ゾクッとする不思議な絵本。

かねこ まき先生にインタビュー

子どもの頃、お気に入りだった絵本や読み物はありますか?

4歳の誕生日にもらった「ピーターラビット」シリーズがすごく好きで、大きくなってからも、一人で読んだり絵を描いたり、ぼろぼろになった今でも本棚にあります。

読み物では『大どろぼうホッツェンプロッツ』『それいけズッコケ三人組』『きみはダックス先生がきらいか』『消えた2ページ』などはよく覚えています。

影響を受けた作家はいらっしゃいますか?絵本以外の分野でも結構です。

美術史におけるルネサンス、マニエリスム期の古典絵画の描き方や、ロマン主義、象徴主義、シュルレアリスムの表現方法などを取り入れつつ作っています。

絵本作家デビューされたきっかけは?

ピンポイントギャラリー主催のピンポイント絵本コンペで最優秀賞をいただき開催された個展に、アリス館の編集さんが来てくださり、後日『ちゃのまのおざぶとん』の持ち込みをして、それがデビュー作となりました。

画材は何を使っていらっしゃいますか?

ベースはアクリル絵の具で、油性色鉛筆やパステルなども使います。『せっけんアワー』(文研出版)では、泡の部分は石鹸を使って泡立てた絵の具で描いて、泡のテクスチャを得ています。

今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。

『いちごりら』

このシンプルなテキストにどんな絵がいいんだろう? と最初は線の太いはっきりした絵を描いて見せたところ、編集さんに、ふだんのかねこさんの絵で描いてください、と言われて。怖くならないかしらと心配しつつも思いっきり描かせていただきました(笑)。言葉遊びのおもしろさと変身の驚きが最大になるパターンを編集さんと丁寧に探りました。

『めんぼうズ』

マイナーな存在を主人公にしたいという思いから、綿棒をピンセットでつまんで顔をつくるという彫刻作品をちまちまと作っていて、1000本作ってひな壇上に並べた立体作品や、綿棒を使って点描画を描いたりということを続けているうちに、世にも不思議なお話ができました(笑)。

どんな時にアイデアが浮かびますか?

仕事の手を休めてちょっと一息ついている時や、家族との会話の中など。あとは草むしり、洗い物、洗濯物をたたんでいる時など、単純作業で何かしら手を動かしている時が多い気がします。

今まで手がけられた作品の中で、一番印象深いものは?『めんぼうズ』です。

この作品が出版されたのは、コロナ禍と東京2020オリンピックが重なり、人や物の動きが大きく制限されていた2021年でした。書店への配本も遅れ、どうなるかと不安だったんですが、版元のアリス館が、リアルめんぼうズ(実物)をPOPに貼って、書店へ本と一緒に送ってくれたり、書店員さんたちも大きな立体めんぼうズを作って売り場を盛り上げてくださったり…

またアリス館のSNSでは、リアルめんぼうズをいろいろな場所に置いて撮影し、読者に探してもらう「めんぼうズを探せ」企画が展開されたり、営業さんがシャツの胸ポケットにリアルめんぼうズをしのばせて書店さんを回ったりも。なんだかすごく盛り上がって。それを見て反応してくれた方々とのやりとりも、ものすごく楽しくて。

絵本は「作って出して終わり」じゃない、その先にいる書店員さんたちの絵本愛のすごさや絵本好きの方々のノリのよさや版元さんの販促のきめの細かさなどなど、作品を届ける際の、とびきりの遊び心に触れられた機会でした。

作品作りのこだわりや絵本を通じてお伝えになりたいことは?

私はたとえば保育園の砂場の隅っこで、自分だけのお城を作って悦に入っているような子どもが、大きくなって作家になっちゃった感じだなと思っています。まずは自分の「これがやりたい」を、自分以外の人たちにも届くように形作っていくことを心がけています。

みんなが気にも留めないようなマイナーなものに光を当てて、意外な面を見せる、それが全員に好かれなくてもいいんだけど同じ周波数帯域の人に深く刺さるような、そんな作品作りを目指したいです。

絵本作家以外でやってみたいお仕事はありますか?

いつか読み物や小説にチャレンジしてみたいです。

ご趣味についてお聞かせください。

ちんまりした地味なものをみつけると愛でる傾向にあります。いつでも絵本の素材になりそうなものを探している気がします。趣味じゃなく仕事ですね…

お好きな言葉を教えてください。

「情けは人のためならず」

『ありがとうのもり』(金の星社=『あるひもりのなかで』鈴木出版/月刊絵本)のお話のベースになったことわざです。

ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

私はどんなものもまじめに一所懸命描いているだけなのですが、皆さんにシュールとかナンセンスとか、おもしろがっていただけて、すごく光栄だなと思います。これからもかねこまきの絵本をよろしくお願いします。

かねこ まき先生、ありがとうございました!