こころ育てる絵本との出会い

マグちゃん通信

2026 2 - 3 vol.96

絵本作家インタビューまつおか たつひで

マグちゃん通信vol.96 表紙『ベッドにのってきょうりゅうのくにへ』(童心社)より
表紙『ベッドにのってきょうりゅうのくにへ』(童心社)より

夜空の星の数ほどの

生物が生活している地球に

自分たちも生活しているという幸せ。

それを絵本を通して伝えたいです。

プロフィール

まつおか たつひで

1964年新潟県長岡市生まれ。小学生の頃から互尊社の森、東山等で観察や採集に明け暮れる。1967年フリーのイラストレーターになる。1968年『知識絵本』(北隆館)10巻を出版し絵本作家としてデビュー。この頃から外国への自然観察の旅を始め、創作絵本のほか、国内はもとより、中南米、アフリカ、東南アジアなど世界各地での取材にもとづく、多くの科学絵本を発表している。『すばらしい世界の自然』(大日本図書・厚生省児童福祉文化賞)、『ジャングル』(岩崎書店・厚生省児童福祉文化賞と日本科学読物賞)、『ぼくのロボット恐竜探検』(福音館書店・国際アンデルセン賞、オナリスト賞受賞)、『震度7新潟県中越地震を忘れない』(ポプラ社・産経児童出版文化賞)、『野遊びを楽しむ里山百年図鑑』(小学館・第58回小学館児童出版文化賞)、『バッタロボットのぼうけん』(ポプラ社・産経児童出版文化賞美術賞)など受賞作多数。主な絵本に、『ぴょーん』(ポプラ社)、『だんごむしそらをとぶ』(小学館)、『父さんの小さかったとき』(福音館書店)、『昆虫の生活』(幻冬舎)、『こねこが』(めくるむ)、『ちきゅうの かいだん』(金の星社)、『ベッドのなかはきょうりゅうのくに』(童心社)などがある。

現在、自然豊かな新潟県川口町のアトリエで活動、自然観察や絵本製作に励む。

絵本原画展

2025年9月13日(土)~11月6日(木)

『ベッドにのってきょうりゅうのくにへ』 『ベッドにのってきょうりゅうのくにへ』
『ベッドにのってきょうりゅうのくにへ』 童心社 ある夜、ベッドの上でうとうとしていたら、窓がひとりでに開いて、ふわっとベッドがういて……いつのまにか大むかしの大陸の上をとんでいた。そこは、白亜紀の南アメリカ大陸。
『ぼくらは いけのカエル』 『ぼくらは いけのカエル』 『ぼくらは いけのカエル』
『ぼくらは いけのカエル』 ほるぷ出版 ぼくはモリアオガエル。とびこみも、もぐりも、およぎもとくいだよ。この池には他のカエルもすんでいるんだ……お話に親しみながら、さまざまなカエルの生態に出会える絵本。

まつおか たつひで先生にインタビュー

子どもの頃、お気に入りだった絵本や読み物はありますか?

『ロビンソン・クルーソー』や『十五少年漂流記』。

影響を受けた作家はいらっしゃいますか?絵本以外の分野でも結構です。

アルフレッド・ウォーレス。約150年前に活躍した生物学者でダーウィンと同時期、進化論を考えていた人物です。『熱帯アジアの探検記』に大きな影響を受け、私が30代の頃、彼の足跡を求め、アラフラ海に一カ月の探検旅行をしました。

絵本作家デビューされたきっかけは?

20代からデザイナーの仕事をしていて、友人とグループ展を新宿でやっていた時、たまたま通りがかりに観に来てくれた編集者に自然の絵本の道を開いてもらいました。

画材は何を使っていらっしゃいますか?

ペン画、水彩画が主で、かつては丸ペンを使っていましたが、今は0・05㎜のマーカーを使っています。その他、色鉛筆や油彩も使います。

今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。

『ぼくらは いけのカエル』

アトリエに近い山に小さな溜池があって、雪のない4月から11月ぐらいまで観察に通っています。モリアオガエル、アカハライモリ、クロサンショウウオ、それに美しいルリボシヤンマやクロスジギンヤンマがたくさんいる楽しい所です。ここを頻繁に訪れているうち、カエルたちの生活が楽しそうなので絵本にしました。

『ベッドにのってきょうりゅうのくにへ』

私の好きな西表島にはマングローブ地帯があってカニやトビハゼ、アナジャコ、それにヤマネコまでいてたいへん楽しい所です。「もしかして大型草食恐竜もマングローブ地帯で楽しい食事をしていたかも」と思い、この絵本にしました。

どんな時にアイデアが浮かびますか?

夢の中です。

スランプの時はどのように乗り越えられますか?

スランプは特にないのですが、自然を求めて旅をすることで気分転換をしています。

今まで手がけられた作品の中で、一番印象深いものは?

「黒ひげ先生の世界探検」シリーズ(小学館)

私が20代後半から30代前半まで熱帯アジア、オーストラリア、アフリカ、中米、南米等に自然観察旅行をして初めて目にする動植物に大興奮してつくった絵本です。

私の子ども時代のように地球上の生物に興味を持っている子どもたちのために、そして地球が2つとないすごい星だと思ってくれたら…とつくりました。

今後どのような絵本を描いてみたいですか?

人間を他の生物が観察する絵本や、人間がオオカミからつくった、数百種もの犬たちが自分たちの誕生の秘密を話し合う絵本。人間にとって必要とされなかったために命を絶たれた犬種たちの命について考える作品を描いてみたいです。

絵本作家以外でやってみたいお仕事はありますか?

漁師。船に乗って数十メートルの深海の魚を狙っている時、竿に当りが伝わってくると体中に電気が走る。この感覚は多分、他の動物たちに共通ではないかと思います。

ご趣味についてお聞かせください。

海外の自然を旅して色々な生物に出逢うことです。コレクションは甲虫、蜂、蝶等の採集した昆虫を乾燥標本として持っています。年齢的にもこれらを欲しがる子どもたちがいれば差し上げたいと思っています。

お好きな言葉を教えてください。

太陽系第三惑星「青い星」。

ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

私が常に思うのは、人間は細菌に比べれば巨大だけれど、他の生物からはエボラやコロナのように恐れられている存在かもしれないということです。都市という頑丈な巣を張り巡らし、車や飛行機で高速移動し、自然を変えて自分たちの都合の良い環境を作り上げてきました。元々の植物を野菜に変え、動物も食料として家畜を育て、愛玩動物まで作り出しました。優しい人も多いけれど、集団になると国を作り、争い、地球を滅ぼすほどの兵器まで造る恐ろしい存在です。

それでも私は、今いる、あるいはこれから生まれてくる子どもたちに、この地球がどれほど美しく、多様な生き物が共に生きている星であるかを実感してほしいと思います。アフリカではサバンナの動物たちのすぐそばで金やダイヤモンド等の鉱物を巡る争いが起き、そこで生まれ育った子どもたちは自然と触れ合う時間もありません。こんな美しい地球に生まれてきたのに、可哀そうとしか言えません。

野山に飛ぶ蝶やトンボ、美しい野花と一千万円の腕時計を比べて、蝶や花が欲しいと言う人はまずいないでしょう。人間が絶対に作れない自然の方が本当はなくてはならないものなのに、私自身もその誘惑に負けてしまうことがあります。

今さら素っ裸になって野に飛び出せと言っても無理ですから、せめて身の回りの生き物たちに感謝する気持ちを持ちたいものです。それを子どもに教えるのではなく、まずは大人が地球に感謝することが大切だと思います。

まつおか たつひで先生、ありがとうございました!