絵本作家インタビュー豊福まきこ

アイデアが浮かぶのは、
自分の気持ちが動いた時。
自分の気持ちが動かなければ、何を描いても
読み手の気持ちは動かないだろうと思うので。
プロフィール

東京都出身。武蔵野美術大学卒業。
広告代理店でグラフィックデザイナーとして勤務したのち、イラストレーターに転向。
現在は絵本を中心に児童書関連で広く活動中。
絵本に『わすれもの』『おどりたいの』『おくりもの』『こりすのクリスマス』『ひみつのたからもの』(以上BL出版)『ただいま』(小学館)がある。
絵本原画展
2025年9月13日(土)~11月6日(木)





豊福まきこ先生にインタビュー
子どもの頃、お気に入りだった絵本や読み物はありますか?
『九月姫とウグイス』。
シャム(今のタイ王国)の王様がお誕生日に、お祝いを受けるかわりにご自分から贈り物をする、というくだりが好きでした。それと、お姫様は昼も夜も窓を開けて過ごしていたので、とてもきれいになった、というところも。理由はわかりませんが、どちらも小さかった私がとても素敵なことに感じたようです。
影響を受けた作家はいらっしゃいますか?絵本以外の分野でも結構です。
たくさんいますが、絵本作家ならリスベート・ツヴェルガーさん。絵に品の良さと少しのユーモアと、日本人のような詫び寂びを感じてとても好きです。
絵本作家デビューされたきっかけは?
山梨県にある〝えほん村〞というところで、絵本作家を目指している人たちと出版社を繋ぐイベントがあり、そこでBL出版さんに出会ったのがきっかけです。
画材は何を使っていらっしゃいますか?
透明水彩。メーカーはホルベインをメインに、ウインザー&ニュートン、マイメリなど。
今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。
『おどりたいの』
2015年、ABT(アメリカンバレエシアター)で、とある黒人女性のダンサーがプリンシパル(主役を踊る人)に昇格した、というニュースを見たのがきっかけです。世界中のバレエ団に黒人ダンサーはいますが、白人文化から生まれたバレエの世界で活躍の場を得るのには今でも難しいものがあります。
作中、白や茶や黒やいろんな色の子うさぎを描きました。また、太った子、耳の垂れている子も描きました。障壁に感じるものを超えて、ただ「これが好き」という気持ちを一番大切にしてほしい。諦めずに何かに挑戦し続けてほしい。その気持ちがあれば、困難を乗り越えていけるかもしれない。そんなことを考えながら描きました。
『ひみつのたからもの』
昨今「多様性の時代」という言葉をよく耳にするようになりました。確かに色々な選択肢が増え、音楽、趣味、ファッション、働き方、人生にいたるまで、その人がいいのであればなんでもあり、という考え方になってきたと感じます。(もちろん人に迷惑をかけない範囲で、ですが。)
毎日新しく生まれてくるコンテンツや、ようやく人にオープンにできるようになった小さな趣味の世界など、数が増えるだけ、仲間を見つけるのは難しいかもしれません。その中で一人でも共感してくれる同志がいてくれたら。そしてその誰かと「好き」の気持ちを分かち合えたら。友達は大勢いなくても幸せだろうと思うのです。
この多様性の過渡期にあたる今、そんな気持ちをお話にできたらと思いました。
どんな時にアイデアが浮かびますか?
自分の気持ちが動いた時です。自分の気持ちが動かなければ、何を描いても読み手の気持ちは動かないだろうと思うので。
スランプの時はどのように乗り越えられますか?
乗り越えるもなにも…四六時中スランプです(笑)。正直なところ、満足のいく絵が描けたと思ったことが数えるほどしかありません。これはあくまで自分の中の基準ですし、世の中に送り出すレベルには引き上げているつもりですが、己の満足度で言うと常に〝描けない=スランプ状態〞です。
今まで手がけられた作品の中で、一番印象深いものは?
デビュー作の『わすれもの』(BL出版)です。今思えば未熟ではありましたが、あの時の自分の最良、最高、持てる力のすべてをつぎ込みました。描き終わって送り出した瞬間にずいぶん泣きました。疲れと不安と描き終わってしまった寂しさと…あの時の気持ちは生涯忘れられません。
今後どのような絵本を描いてみたいですか?
いつかページの端から端まで、心から満足のいく絵本を作れたらいいな、と思います。
絵本作家以外でやってみたいお仕事はありますか?
昔から数字や計算が苦手です。なので、なれるなら数学者か銀行員など数字に強い人になりたいです。そうすれば生きていくうちで怖いものがひとつ減るかなぁ、と思って。
ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
見てくださる皆様、本当にありがとうございます。これからもその時の自分の精一杯で描いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
豊福まきこ先生、ありがとうございました!