こころ育てる絵本との出会い

マグちゃん通信

2024 2 - 3 vol.85

絵本作家インタビューまつお りかこ

マグちゃん通信vol.85 表紙『いつつごうさぎのきっさてん』(岩崎書店)より
表紙『いつつごうさぎのきっさてん』(岩崎書店)より

子どもの頃、絵本の中のあたたかな世界に憧れ、

こんな生活がしたいと希望を抱いていました。

私も、そんな安心感を与えられる作品が

作れたら嬉しいです。

プロフィール

まつお りかこ

イラストレーター・絵本作家。1989年生まれ。女子美術大学版画コース卒業。主な絵本作品に「いつつごうさぎ」シリーズ、『たからもののあなた』『あめのひ えんそく』(岩崎書店)、『おふろだいすき!しろくまきょうだい』(教育画劇)、モンポケ絵本シリーズ『ピカチュウとはじめてのともだち』(小学館)など。

絵本原画展

2024年3月30日(土)~5月30日(木)

『いつつごうさぎのきっさてん』 『いつつごうさぎのきっさてん』
『いつつごうさぎのきっさてん』 岩崎書店 「いらっしゃいませー!いつつごうさぎのきっさてん、かいてんしまーす!」家と喫茶店が一緒になったトラックで旅をする、愉快ないつつごうさぎ、メイ、プー、ルナ、シロ、ミルのお話。
『いつつごうさぎとうみのほうせき』 『いつつごうさぎとうみのほうせき』
『いつつごうさぎとうみのほうせき』 岩崎書店 『今日は海辺で開店です。トウモロコシ、じゅうじゅう焼いて。氷はけずってふわふわに。ちょっと休憩、海で遊ぼう。波打ち際でシロが拾ったのは、キラキラ輝く宝石!?
『いつつごうさぎとゆきのもり』 『いつつごうさぎとゆきのもり』
『いつつごうさぎとゆきのもり』 岩崎書店 長い長いトンネルをぬけると、そこはあたり一面雪!さあ、雪遊び!雪だるまづくりに、ソリすべり。メイが見つけた小道を行くと、大きな湖があって…

まつお りかこ先生にインタビュー

子どもの頃、お気に入りだった絵本や読み物はありますか?

わかやまけん先生の『しろくまちゃんのほっとけーき』、林明子先生の『こんとあき』、寺村輝夫先生の「わかったさんのおかし」シリーズ、「こまったさんのおはなしりょうりきょうしつ」シリーズ、「かいぞくポケット」シリーズが特に好きでした。

影響を受けた作家はいらっしゃいますか? 絵本以外の分野でも結構です。

多くの作家さんや作品から影響をいっぱい受けているのですが今回展示していただく「いつつごうさぎ」シリーズに関して言いますと、巻末にレシピが載っていたり、トラックの内面図が載っていたりするのは、子どもの頃好きだった児童書の「わかったさん」シリーズ、「かいぞくポケット」シリーズの影響を受けています。

また、子どもの頃はアニメや漫画、テレビゲームも大好きで、それらの作品たちからも影響は多く受けていると思います。

絵本作家デビューされたきっかけは?

大学卒業後に個展をした際、絵本の出版社各社にDMをお送りしました。そのDMを見て個展に来てくださった岩崎書店の編集者さんに、後日絵本のダミーを持ち込みしまして、出版に至ったのがデビュー作である『あめのひ えんそく』という絵本です。

ちなみに今回展示する「いつつごうさぎ」シリーズも、そのときの編集者さんと一緒に作った作品です。

画材は何を使っていらっしゃいますか?

ポスターカラーを主に使っています。子どもの頃に見ていたディズニーやジブリなどのアニメ背景に憧れて、使い始めたのがきっかけです。

今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。

●「いつつごうさぎ」シリーズ

昔からお菓子作りが趣味であり、カフェという空間が好きだったため、以前はカフェでお菓子を作る仕事をしている時期がありました。そのときに編集者さんから「お菓子がテーマの絵本を作りませんか」と言われたのが、シリーズが生まれたきっかけです。物語に出てくるお菓子は、編集者さんと一緒に何度も試作を重ねてできあがったものです。

小さなお子さんと一緒にお菓子を作るというのはきっと大変なことかと思うのですが、例えば休日などの時間がゆったりとあるときに、親子一緒に楽しむ感覚で作ってもらえたらうれしいなという願いを込めて、物語とレシピを考えました。

どんな時にアイデアが浮かびますか?

机の前で頭を抱えて、うんうんと悩むことがほとんどですが、歩いているときや、日常生活のふっとした瞬間にきっかけをつかむことが多い気もします。でも、それもうんうんと悩む時間があってこそ、出てくるものだと思っています。

スランプの時は、どのように乗り切りますか?

絵の場合は、作家さんの展覧会に行くとか、映画や漫画など他の方の作品を見ると、いい刺激を受けてまた描きたい欲が出てくるのですが、絵本の物語作りで煮詰まるときは、とにかく悩んで悩んで…です。これといった解決策はまだ見つかりません。ただ、図書館などに行って、他の方の絵本を読むのは勉強になりますし、いい刺激を受けます。

今まで手がけられた作品の中で、一番印象深いものは?

どの作品も大事で印象深いものですが、『たからもののあなた』は特に私自身の経験や、私なりのメッセージ性が色濃く出た作品だと思います。我が家は両親共働きで、小学生の頃から姉と鍵っ子の生活でした。子ども目線での自分自身の思いと、働くお母さんである担当編集者さんの意見を交えて、できあがった作品です。

作品作りのこだわりや絵本を通じてお伝えになりたいことは?

私自身、子どもの頃読んだ絵本の中のあたたかな世界に憧れ、こんな生活がしたいと希望を抱いていました。

私も、そんな安心感を与えられる作品が作れたら嬉しいです。

今後どのような絵本を描いてみたいですか?

特に限定はせず、自分がいいなと思ったことをテーマに描いていきたいです。

それとは別に、「いつつごうさぎ」シリーズはゆっくりでも長く、続けていけたらいいなと思っています。いつつごうさぎたちを色々なところに連れて行きたいです。

絵本作家以外でやってみたいお仕事はありますか?

今の人生では、特にないです。

絵を描くことも、物語作りも、自分の「やりたい」という気持ちが続く限り、これからも追求していきたいと思っています。

お好きな言葉を教えてください。

「人生、一生勉強」。祖父の言葉です。

ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

絵本を読んでいただき、ありがとうございます。絵本を通してほんの少しでも、楽しい気持ちになっていただけたらとても嬉しいです。私自身も楽しみながら、これからも色々な作品を作っていきたいと思います。

そしてこの度、能登半島地震の被害に遭われた方々へ、心からお見舞い申し上げます。お子様も、大人の方も、どんなに怖い思いをされたか、想像をしただけで胸が締め付けられる思いです。この「マグちゃん通信」が皆様の目に触れる時期には、どうか皆様が安全な状況で心穏やかに過ごせておられますように、強く強く祈っております。

絵本が、心安らかな時間を皆様に与えてくれますように。願っております。

まつお りかこ先生、ありがとうございました!