こころ育てる絵本との出会い

マグちゃん通信

2023 12 - 2024 1 vol.83

絵本作家インタビュー樋󠄀勝朋巳

マグちゃん通信vol.83 表紙『おさるちゃんのおしごと』(小学館)より
表紙『おさるちゃんのおしごと』(小学館)より

自分が美しいと思うこと、

信じていることを描くようにしています。

日常の幸福感や安心のようなものが

伝わればいいなあと思っています。

プロフィール

樋󠄀勝朋巳

1969年、長野県生まれ。多摩美術大学卒業後、デザイン会社勤務を経て銅版画制作をはじめる。以降、銅版画家として活動。1998年、ボローニャ国際絵本原画展入選。『きょうはマラカスのひ』で第19回日本絵本賞の大賞受賞。「クネクネさんのえほん」シリーズには、ほかに『フワフワさんは けいとやさん』『パーマさんは パーマやさん』『たいこ』(すべて福音館書店)がある。ほかに『ペロのおしごと』(小学館)『わたしのかみがた』『あのこ』(ブロンズ新社)『チキカングー』(こぐま社)『こっちとあっち』(谷川俊太郎・文/クレヨンハウス)など。

絵本原画展

2023年11月18日(土)~2024年1月28日(日)

『きょうはパーティーのひ』 『きょうはパーティーのひ』 『きょうはパーティーのひ』
『きょうはパーティーのひ』 福音館書店 はらまきタイツがトレードマークのクネクネさんは、個性豊かなお友だちに囲まれて、ちょっぴり不思議で素敵な毎日を送っています。ある日、パーティーに行く途中、風でいろんなものが飛ばされてきて…
『おさるちゃんのおしごと』 『おさるちゃんのおしごと』
『おさるちゃんのおしごと』 小学館 おさるちゃんは「せいこついん」ではたらいています。かんじゃさんのいたいところをマッサージしてあげるおしごとです。つきにいちど、おさるちゃんはやまへかえってやまのなかまをマッサージしてあげます。

樋󠄀勝朋巳先生にインタビュー

子どもの頃、お気に入りだった絵本や読み物はありますか?

加古里子先生の「だるまちゃん」シリーズや、「バーバパパ」シリーズが好きでした。

母によると「裸の王様」を繰り返し読まされていたとのこと。丸暗記していて、読み間違いや読み方を指示するような子どもだったようです。

影響を受けた作家はいらっしゃいますか?

絵本以外の分野でも結構です。

加古里子先生です。

自分で絵本を描くようになって、改めて加古先生の絵本の素晴らしさを知りました。「僕は子どもたちの応援団だから」という先生の言葉に全てが込められているように、子どもたちへの温かい絵本作りに感銘を受けました。

絵本作家デビューされたきっかけは?

銅版画作家として制作をしていて、お世話になっている画廊さんから福音館書店の編集者の方を紹介されたのがきっかけです。

画材は何を使っていらっしゃいますか?

銅版画で線を描き、水彩絵具で手彩色をしています。

版画なので制作上、絵が反転し、いくつかの工程を経ることで表情や目つきが微妙になってしまうこともあります。でも銅版画の線が好きなのでこの技法で制作しています。

今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。

『おさるちゃんのおしごと』

『ペロのおしごと』という絵本が先にあるのですが、犬のペロが人間のお母さんにネックレスを買ってあげるためにお仕事を探すという内容です。その中で既におさるちゃんは村田整骨院で働いていました。その続編ということで、『おさるちゃんのおしごと』を作りました。

『きょうはパーティーのひ』

『きょうはマラカスのひ』と『フワフワさんはけいとやさん』を一緒に作ってくれた編集者の方と、定年退職されるギリギリまでやり取りをした思い出の本です。

私に絵本を作るきっかけをくれた恩人との最後の一冊です。

どんな時にアイデアが浮かびますか?

ふとした時に心に引っかかる言葉や場面やリズムがあるのですが、それをメモしておきます。改めてそこからお話を膨らませていくことが多いです。

また、今まで制作してきた版画やタブロー作品を元に作ることもあります。

スランプの時は、どのように乗り切りますか?

絵本は気分よく楽しく作りたいので、気持ちが乗らない時は無理をせずに別のことをするようにしています。

今まで手がけられた作品の中で、一番印象深いものは?

『ペロのおしごと』です。

お母さん(人間)のことが好きで好きでたまらない犬のペロが、お母さんにネックレスを買ってあげたいと思う絵本です。ペロは2本の足で立ち、首輪をパッと外して、腰にベルトをキュッと巻いて、ネックレスを買うためにお仕事を探しに出かけます。長い間温めていた大切なお話で、ペロの気持ちや、周りの人たちとのやり取りをうまく形にできたと思う一冊です。

作品作りのこだわりや絵本を通じてお伝えになりたいことは?

自分が美しいと思うこと、信じていることを描くようにしています。

日常の幸福感や安心のようなものが伝わればいいなあと思っています。

今後どのような絵本を描いてみたいですか?

童話など文章が多めのものに挑戦してみたいです。

絵本作家以外でやってみたいお仕事はありますか?

子どもの自由アトリエです。

長い間子どもたちに絵や工作を教える仕事をしてきました。

子どもたちの発想と作り出す作品は凄まじく、本当に豊かで素晴らしいものです。大人が教える隙間はほとんどないと感じてきました。

次にやってみたいことは、子どものための創作の場所作りです。その時の気分で好きな時に来て、自由に描いたり、大きなものを制作したり、料理もできたり、洋服を作ったり、子どもが自分で考えて創作できる自由アトリエという場所を作ってみたいですね。おばあちゃんたちが運営する子ども喫茶(無料)とかもあって、メニューはおばあちゃんの手作りケーキや、シュウマイや、コロッケや、梅干しや、大学芋など。制作に疲れたら子ども喫茶で一休み。夢は膨らみますね!

ご趣味についてお聞かせください。

近年、野良猫の観察と交流に夢中です。

ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

いつも絵本を読んでいただきありがとうございます。

風変わりなメンバーの滑稽な日常を描いていますが、私が日々感じた幸福感のようなものを、姿形を変えて描いています。

楽しんでいただけたら嬉しいです。

樋󠄀勝朋巳先生、ありがとうございました!