絵本作家インタビュー吉田 尚令

――『希望の牧場』。
自分にとって大切な作品です。
原稿を初めて読んだとき、感嘆して
しばらく身震いが止まりませんでした。
プロフィール

1971年 大阪府生まれ。絵本や書籍の挿画などを手がける。『希望の牧場』(森 絵都/作 岩崎書店)でIBBYオナーリスト賞を受賞。主な絵本に『悪い本』(宮部みゆき/作 岩崎書店)、『星につたえて』(安東みきえ/作 アリス館)、『はるとあき』(斉藤 倫、うきまる/作 小学館)、挿画に「雨ふる本屋」シリーズ(日向理恵子/作 童心社)などがある。
絵本原画展
2023年7月22日(土)~9月14日(木)






吉田 尚令先生にインタビュー
子どもの頃、お気に入りだった絵本や読み物はありますか?
幼少期、家に絵本や児童書がいっぱいあるような環境ではなかったので、特に好きな絵本や読み物というのはなかったように思います。
影響を受けた作家はいらっしゃいますか? 絵本以外の分野でも結構です。
ユーリ・ノルシュテインやフレデリック・バックのアニメーションを高校生くらいの頃に観た影響は大きくあったと思います。
茂田井武や高野文子も好きで影響を受けていると思います。
その他にも影響を受けた好きな人はいっぱいいます。
絵本作家デビューされたきっかけは?
自分は絵だけを描くので実のところ、絵本作家ではない絵本画家だと思っていますが、2007年に東京で展覧会をした際に絵本の編集者さんに出会えたことがきっかけと思います。
画材は何を使っていらっしゃいますか?
水彩絵の具、カラーインク、ポスターカラーなど作品によって様々です。毎回いろんな画材を使います。
絵本制作はいつも「紙に絵筆で描いた原画」をスキャンしデータ化したものをフォトショップで補正します。
データ補正したものが絵の完成形なので、今回展示していただく「紙に絵筆で描いた原画」というのはまだ制作途中の段階ではあるのです。
それを人に見られるというのは何とも気恥ずかしい気持ちです。
今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。
『希望の牧場』
自分にとって大切な作品です。絵本を作るにあたって文章の森絵都さん、岩崎書店の編集者さんと3人で福島県浪江町に取材に行ったことがとても印象深いです。
森絵都さんの原稿を初めて読んだとき、感嘆してしばらく身震いが止まりませんでした。素晴らしい原稿だと思いました。
絵は約2ヶ月間ほどで描き上げました。できる限り「牛飼い」の内面を描きたいと思っていました。
絵本のキャラクター風な「牛飼いのおじさん」にはしたくなかったので、絵のタッチやデザインをあえて統一しませんでした。具象画にしたり抽象画にしたり絵を統一しないことで、牛飼いという人の内面の複雑さを多角的に描けるのではないかと思ったからです。
どんな時にアイデアが浮かびますか?
アイデア…。絵のアイデアということですかね?文章を読んでいると、自ずと絵のイメージは浮かぶので、う〜ん…と捻り出すような感覚ではなく、文章を読むと浮かぶという感じです。
スランプの時は、どのように乗り切りますか?
「うわ〜描けない〜!」ってことは多々あるのですが、それをスランプだと思ったことは一度もないです。
ただただ自分が下手くそだと思います。下手なりに何枚も描き損じて、もがく以外ないように思います。
今まで手がけられた作品の中で、一番印象深いものは?
一番は?というと難しいです。『希望の牧場』はもちろん『悪い本』(岩崎書店)や『星につたえて』(アリス館)『はるとあき』(小学館)も印象深いです。
作品作りのこだわりや絵本を通じてお伝えになりたいことは?
こだわりということとは違うと思いますが、その作品の絵の依頼をお引き受けするかしないかの判断をなるべく誠実にしたいとは思っていて。
お断りする場合にも原稿に対する感想を、言いづらいことも含めてなるべく正直に伝えようと思っています。そうすることで、その作品の底上げになっていたり、児童書の世界の中で少しでもプラスになっていればいいなと思っているのだけれど…迷惑なだけかもしれません。
今後どのような絵本を描いてみたいですか?
いっぱいあります。ファンタジーをもっと描きたいです。『希望の牧場』のようなドキュメンタリーみたいなのもまた作ってみたいし、『悪い本』みたいなホラーもまた描いてみたい。コメディーも描きたい。
笑える絵本をすごく作りたい。絵本作家になっていなかったら、どんなお仕事をしていたでしょう?
何してんだろう…。何かしらデザインの仕事をしてるんだろうか。
絵本の仕事にありつけて本当に良かったと感謝しています。
ご趣味についてお聞かせください。
趣味…。音楽を聴くのが好きで、お酒が好きで、映画を観たり、メジャーリーグを観たりです。
お好きな言葉を教えてください。
特にないのですが「平和」とかですかね。
ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
「ファンの皆さん」とか多分あんまりいないのですが、良い児童書を作りたいです。
良い児童書の絵を描きたいです。
吉田 尚令先生、ありがとうございました!