こころ育てる絵本との出会い

マグちゃん通信

2022 10-11 vol.76

絵本作家インタビュー石川基子

マグちゃん通信vol.76 表紙『ほしじいたけ ほしばあたけ』(講談社)より
表紙『ほしじいたけ ほしばあたけ』(講談社)より

作者の意図以上のものを深読みしてもらえて、

読者に感心させられることも。

本でも音楽でも映画でも

さまざまな受け止め方が

できるものがいいなあと思います。

プロフィール

石川基子

愛知県生まれ。京都教育大学特修美術科卒業。「子どもの本専門店 メリーゴーランド」の絵本塾で絵本作りを学ぶ。第12回ピンポイント絵本コンペ最優秀賞、第35回講談社絵本新人賞佳作受賞。第36回講談社絵本新人賞受賞作『ほしじいたけ ほしばあたけ』(講談社)でデビュー。シリーズに『ほしじいたけ ほしばあたけ じめじめ谷でききいっぱつ』『ほしじいたけ ほしばあたけ カエンタケにごようじん』『ほしじいたけ ほしばあたけいざ、せんにんやまへ』『ほしじいたけ ほしばあたけ おにたいじはいちだいじ?』がある。造形教室講師として、子どもたちに一緒に遊んでもらっている。

絵本原画展

2022年9月17日(土)~11月17日(木)

ほしじいたけ ほしばあたけ』 ほしじいたけ ほしばあたけ』
『ほしじいたけ ほしばあたけ』 講談社 いろいろなきのこが暮らすきのこ村は、いつもにぎやか。そんなみんなから敬愛されているのが、ほしじいたけと、ほしばあたけ。ある日、村の子どもが谷から落ちてしまい、それを聞いたほしじいたけは……。
『なんと!ようひんてん』 『なんと!ようひんてん』
『なんと!ようひんてん』 講談社 おじいさんといっしょに新規開店の洋品店へいってみると、ふしぎな商品がいっぱい。試着室へ案内されると次々に困難がふりかかります。それをきりぬけるには、そうだ、試着だ! 

石川基子先生にインタビュー

子どもの頃、お気に入りだった絵本や読み物はありますか?

リンドグレーンの『やかまし村の子どもたち』シリーズです。村の子どもたちの暮らしぶりがうらやましかった。挿し絵(イロン・ヴィークランド)も大好きでした。

影響を受けた作家はいらっしゃいますか?絵本以外の分野でも結構です。

エゴン・シーレ(影響を受けたくても受けられる技量がありませんが)。スタシス・エイドリゲヴィチュス。出久根育さんも好きな作家です。

絵本作家デビューされたきっかけは?

第36回講談社絵本新人賞です。

新人賞受賞作は必ず単行本として出版してもらえるので、絵本出版を目指している方、奮ってご応募されてはいかがでしょうか!?

画材は何を使っていらっしゃいますか?

アクリル絵の具とワトソン紙です。

アクリルは乾くと耐水性になるので、描き足したり、上から塗り重ねて修正したりできます。直したいところが後からぼろぼろ出てくる自分にはぴったりです。

今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。

『ほしじいたけ ほしばあたけ』

出版デビュー前までは、イラストや絵本関連のコンテスト応募に情熱を傾けていました。ネタ帳にラクガキしつつ、野菜やきのこなどのキャラクターをぼーっと考えていたときのことです。

シイタケ、シメジ、エリンギ、干し椎茸…干し椎茸のことを「ほしじいたけ」って濁点つけて呼ぶ人もいるよな、「干しざかな」みたいに。干し椎茸ってしわしわのご老人みたいだな。ほしじいたけがいるのならと、隣に垂乳根のほしばあたけも描いてやりました。これが、彼らが初めて私のところにやってきた瞬間です。

その後、イラストのコンテストの出品作の案を練るため、ネタ帳をめくっていると、彼らが「わしらを描きんさい」と訴えかけてきました。「干しじいたけ

干しばあたけ」と題したそのイラストを、ごく一部の人が絶賛、これの絵本を描いたらという人も現れて、私もついその気になりました。が、長らく放置。

その後、絵本塾に通うようになり、やっと彼らを主人公にした絵本を考え始めました。

四日市に向かう電車の中で描き上げた最初のラフは、酷評されましたが、それでも可能性を認めてくれている!と勝手に解釈して、何度も修正を繰り返しました。「若返った方がパワフルならば、元のシワシワに戻らなくてもいいではないか」と講師の方に突っ込まれ、行き詰ってしまったこともあります。塾生仲間から「若返ったほしじいたけはヘタレということにしてしまえばええやん」と言われ、なるほど!ウルトラマンのような設定になりました。

実際、水戻しした干し椎茸は、早めに使わないと傷んでしまいますものね。

このラフを元に絵を仕上げて講談社絵本新人賞に応募し、出版への切符を手に入れました。今度は講談社の編集者さんとさらに練り直して、全編描き直し。多くの人の支えで刊行できました。

『なんと!ようひんてん』

第35回講談社絵本新人賞で佳作入賞した作品を全編改稿したものです。

こちらも絵本塾でラフを作りました。作り始めた当初は、へんてこな商品を次々と紹介するという話で、講師の方たちに「アイデアの羅列!」と一蹴されていました。

何度か修正するうちに〝試着室の冒険〞のアイデアが浮かび、今のような形になりました。

どんな時にアイデアが浮かびますか?

机に向かって、うーんうーんとラクガキしながら考えます。たいてい何も浮かびませんが、諦めて別のことをしたり、歩いたりしているときに思いつくこともあります。

編集者さんとの雑談の後、ぽかっと解決策が浮かぶこともあります。

作品作りのこだわりは?

それぞれの場面を効果的に見せるために視点を意識して構図を考えます。高い位置から見下ろす俯瞰、低い位置から見上げるアオリなど。ただ、俯瞰にすると、きのこたちは傘に隠れて顔、表情が見えなくなってしまうんですよね。なかなか難しいです。

絵本作家になっていなかったら、どんなお仕事をしていたでしょう?

絵本作家になる前の仕事(というか生活)をそのまま続けていたでしょう。

絵本作家を目指してコンテストに応募しつつ、たまに来るイラストの仕事をしつつ、「これ見たらみんなびっくりするぞー」とにやにやしながら試作品作りをする造形教室の講師を続けていたと思います。今の生活とあまり変わらないかもしれませんね。

ご趣味についてお聞かせください。

公園や旅行先で、きのこ探しをすること。(※自信がないので食べません。)

雨が降り続くと、きのこが出ていないかとそわそわします。

お好きな言葉を教えてください。

「棚からぼたもち」。

なんかあまくて嬉しいイメージですよね。原画展の依頼がいただけたのもタナボタの気分です。

いいアイデアが降ってこないかとタナボタを期待して、いつも口を開けて待っています。

ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

いつも絵本を読んでくださってありがとうございます!

家族で、友達同士で、突っ込みを入れながら楽しんでもらえたら嬉しいです。一人できのこたちになりきって読む(声を出して)のもストレス解消になってお勧めですよ〜!私も時々やっています。

石川基子先生、ありがとうございました!