絵本作家インタビュー末崎茂樹

3点のカットの仕事をもらったのが、 最初の仕事でした。
うれしかったです。
これからも、今の仕事の延長線上に、
自然に出てくるものに逆らわず描いていきたいです。
プロフィール

1948年大阪生まれ。作品に「わんぱくだん」シリーズ、「やまねこせんせい」シリーズ、『おーいおばけ』『くんくんくん』『とんとんとん』『おかしなかくれんぼ』(以上、ひさかたチャイルド)、「くすのきだんち」シリーズ(ひかりのくに)、『おべんとうなあに?』(偕成社)、『ふるるるる』『ねこなんてだいきらい!』(以上、フレーベル館)などがある。
絵本原画展
2022年7月23日(土)~9月15日(木)
夏のギャラリーでは、30年以上続く、なかよし3人組の不思議な冒険物語「わんぱくだん」、ほのぼのした絵とお話、そしてしかけも楽しい「やまねこせんせい」、2つの人気シリーズの絵本原画をご紹介します。



末崎茂樹先生にインタビュー
子どもの頃、お気に入りだった絵本はありますか?
覚えているのは絵本というより、SFの読み物です。
小学生の時、学校の図書室で借りた『白鯨』や『海底2万マイル』など、どきどきしながら読んだのを覚えています。その中の挿し絵も大好きでした。
影響を受けた作家はいらっしゃいますか? 絵本以外の分野でも結構です。
影響を受けやすい性格なので、日本や外国の作家など、いっぱいいすぎてしぼれません。特にブリューゲルは大好きです。本物を見た時には感動しました。
絵本作家デビューされたきっかけは?
もともと絵を描く仕事がしたかったので、絵本もその中のひとつでした。それで絵本の出版社に絵を見てもらいに行き、そこで3点のカットの仕事をもらったのが、出版物の最初の仕事でした。うれしかったです。その後、月刊絵本の仕事が来るようになり、どっぷりと絵本にはまりました。
画材は何を使っていらっしゃいますか?
主にアクリル絵の具です。
今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。
『わんぱくだんの りゅうぐうじょう』
竜宮城を描くのには苦労しました。
このお話では竜宮城の全景を見せたいと思っていましたので、いろいろ資料を集めましたが、どこにも全景など描いているものはありません。創造物ですから描き手によっていろいろなんです。結局このお話の竜宮城を私なりに描きました。どうでしょうか?
『やまねこせんせいの こんやはおつきみ』
「やまねこせんせい」のシリーズは毎回しかけ絵本なので、しかけのアイデアがお話と無理なく進むかどうかが一番難しいのです。3場面にわたる穴あきのしかけには苦労しました。
どんな時にアイデアが浮かびますか?
とにかく机から離れて、気分を変えます。散歩に行ったり、美術館に行ったりと、いろんなことをします。本屋さんには行きません。いろんな人の絵を見ると、よけいスランプになるので…。
今まで手がけられた絵本の中で、一番印象深い絵本は?
『ダンうみへゆく』という絵本で、今はもう出版社もなくなって絶版になっています。30年程前に、ひどいスランプの時があり、自分の絵に自信が持てなくなって悩んでいました。それで出版社や作家の許可をもらい、3年かけて一冊の絵本を描き上げました。時間の制限なしで自分がどこまで描けるのかを試してみたかったのです。
それでなんとか自分の進む方向が見えたように思いました。私にはぜいたくな一冊でした。
絵本をお作りになるときのこだわりや絵本を通じてお伝えになりたいことは?
読者が自然にお話の中に入っていけるような工夫にはいつも気をつけています。
今後どのような絵本を描いてみたいですか?
今の仕事の延長線上に、自然に出てくるものに逆らわず描いていきたいと思っています。今の仕事は描きたい世界でもあるので、自然にまかせます。
絵本作家になっていなかったら、どんなお仕事をしていたでしょう?
絵を描くことしか能がないので、他の仕事は考えたことがありません。
ご趣味についてお聞かせください。
旅行やお寺、神社めぐり等、特に仏像を見るのは大好きです。
お好きな言葉を教えてください。
自然に!
ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
絵本を手に取って楽しんでいただけるだけでうれしいです。
これからも「わんぱくだん」「やまねこせんせい」のシリーズは続きますので、よろしくお願いします。
末崎茂樹先生、ありがとうございました!