こころ育てる絵本との出会い

マグちゃん通信

2021 12-2022 1 vol.71

絵本作家インタビュー岡田よしたか

マグちゃん通信vol.71 表紙『サンドイッチにはさまれたいやつよっといで』(佼成出版社)より
表紙『サンドイッチにはさまれたいやつよっといで』(佼成出版社)より

「なぁ、こんなん面白いやろ」

という気持ちだけで描いてます。

面白いなぁ、楽しいなぁと

思ってもらったら充分です。

プロフィール

岡田よしたか

1956年、大阪府生まれ。愛知県立芸術大学・油画科卒業。地球儀など教材玩具のメーカーや共同保育所に勤務しながら、個展やグループ展を重ね、自費制作による画集も出版。 1987年より11年間保育所に勤務後、絵本作家としてデビュー。 2012年、『ちくわのわーさん』(ブロンズ新社)で、第3回リブロ絵本大賞を受賞。作品に『特急おべんとう号』(福音館書店)、『うどんのうーやん』(ブロンズ新社)、 『すすめ!かいてんずし』(ひかりのくに)、『だいこんさんおふろにはいる』(PHP研究所)、 『そうめんソータロー』(ポプラ社)、『オニのふろめぐり』(小学館)、『ぼくはいったいなんやねん』『おにぎりに はいりたいやつ よっといで』(佼成出版社)ほか多数。奈良県在住。

絵本原画展

2021年11月20日(土)~2022年1月30日(日)

冬のギャラリーでは食べ物キャラクターたちの奇想天外なストーリーが人気の岡田よしたかさんをご紹介。にぎやかな関西弁で繰り広げられるナンセンスな世界を楽しもう!

『サンドイッチに はさまれたいやつ
よっといで』(佼成出版社)
『サンドイッチに はさまれたいやつ
            よっといで』(佼成出版社) 『サンドイッチに はさまれたいやつ
            よっといで』(佼成出版社)
『サンドイッチに はさまれたいやつ よっといで』 佼成出版社 サンドイッチの具に なりたくて、閉店後のパン屋にしのびこんだ具たち。さらに次から次へと個性的な具がやってきて……。
『ぼくはいったいなんやねん』
『ぼくはいったいなんやねん』 『ぼくはいったいなんやねん』
『ぼくはいったいなんやねん』 佼成出版社 長いこと使われていなかったため、 自分がいったい何のための道具なのか忘れてしまった“ある道具”のお話。憎んだ末、“ある道具”は、思い切って自分探しの旅に出ました。

岡田よしたか先生にインタビュー

絵本作家になられたきっかけは?

もともと絵は描いていたのですが、絵本というものには関心がありませんでした。

三十歳過ぎた頃になぜか認可外の小さい保育所で働き出し(こういう仕事も考えたこともなかったけど、あるきっかけでやってみたいと思って)、その中で絵本と出会い、面白いもんがいっぱいあるなぁと。けど自分でやってみようとは思いませんでした。自分には無理やと。保育所に十一年おりましたが結局、財政難で閉鎖。その頃、ある東京の絵描きさんに、東京でのグループ展に参加しないかと誘われ、そしたらそこは何人かの絵本作家さんも関わってて。(その流れで好きやった片山健さんにも会えて嬉しかったものです)で、その展覧会を見に来た福音館書店の当時あった月刊誌「おおきなポケット」の編集者さんに声をかけられたのがきっかけです。その時はちょっとびっくりして「できるやろか」と思いましたが。

画材は何を使っていらっしゃいますか?

ちょっと高い水彩紙の中の一番安いやつにアクリル絵具です。

今回、原画を展示する絵本の制作秘話や思い出を教えてください。

『サンドイッチに はさまれたいやつ よっといで』

編集者さんがこのちょっと前に出た『おにぎりに はいりたいやつ よっといで』のシリーズのような形で出したいと。それで『おにぎり…』が忘れ去られないうちに…とは、言うてなかったかもしれませんが、結構短い期間で出しました。サンドイッチって、パンに具をはさんでから切るのか、切ってからはさむのかどっちなんかなと思って編集者さんに相談しましたね。それによって展開が変わってくるから。『おにぎり…』では最後にあみだくじを付けたので、これにも何かそういう趣向をとちょっと付け足しました。絵を見て探してネ。

『ぼくはいったいなんやねん』

なんと「カニフォークを主人公で」という編集者さんの提案。それも自分が何なのかわからなくなったカニフォーク。面白いけど、あんなん主人公でいけるんかなぁ、とちょっと悩みましたが。

家にはカニフォークがなかったので、どこに売ってるんや、専門店か?」と友人に聞いたら「百均で売ってますよ」と。2本百円で購入したのでした(笑)。

今まで手がけられた絵本の中で、一番印象深い絵本は?

『特急おべんとう号』

単行本デビュー作の『おーいペンギンさーん』の後、何本もボツになって…。何年か経って、もう編集者さん関係なく自分で好きに作ったろ思って(笑)。紙芝居の形にして、これと『猫大災難』の二本を作りました。さらに『全日本おべんとうマラソン』も描き下し一冊の絵本になりました。後に続く食べ物シリーズの最初です。三話収録でお買い得、読み応え充分です。実はデザイン、レイアウトには不満もあるのですが。

今後どのような絵本を描いていかれたいですか?

実は、全然盛り上がらない、何も事件が起こらない、そんな話が描けたらええな、とは前から思っています。ドタバタが好きなのですがそういうのも好きなので。

ご趣味についてお聞かせください。

音楽です。愛用のギターはもう四十八年弾いています。腕がなまらないよう練習を心がけてます。それからハーモニカも。これは最近練習さぼってる。

お好きな言葉を教えてください。

著作を読んでいないのですが吉本隆明さんの一節で「井の中の蛙は、井の外に虚像をもつかぎりは、井の中にあるが、井の外に虚像をもたなければ、井の中にあること自体が井の外とつながっている」というもの。これ、新聞記事で紹介されてて要約なのかもしれませんが、ストンと腑におちました。

もうひとつ「のれんに腕押し糠に釘」。なんか口元がゆるんでしまいますねえ。こういう人やこういう状況をいろいろ想像すると。

ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

「そんなしょうもない絵本見たないわーーい」の声もなく(いや、あるのかもしれませんが。いや、あるでしょう)手に取って読んでいただきありがとうございます。

読み聞かせなど声に出して読むときは関西弁のセリフはむずかしいと思いますが、そんなん気にせんと読んでください。自分がしゃべってる言葉に置き換えて読んでも面白いと思いますよ。

岡田よしたか先生、ありがとうございました!